ふっとほのかに甘い香りが鼻を擽る。
自分の腕の中に何かとても暖かいものがある。いや、居るのだろうか。

無意識に「メアリー」と呟いて、それを抱きしめた。
そしてハッとして目を開けた。

目の前にはスヤスヤと眠る知らない少女がいた。

自分は何をしているのだろうか、この少女は誰だろうか。
状況が把握出来なくて頭が爆発しそうなる。ぐるぐると回る頭を何とか制し、状況の確認をする。

まず、私が今居るのは暖かいベッドだ。
私の横で眠っているのは見知らぬ少女(アジア系かと思われる。中国人?)。
そして、今、このベッドがある部屋は私の部屋ではない。
ということは、多分この少女の部屋だろう。
なぜこんなところに?
この見知らぬ少女は?
私は何をしていた?

考えても考えても自分がどうしてこうなったのか分からない。

いや、それどころではない。
この状況を何とかしなければ……

「…………」

しかし、久しぶりの人の温もりと言うのはとても温かい。

「違う…!」

ついついまた目を閉じそうになってしまう自分を制して、そっと、慎重に少女に掛かっていた自分の腕を退かす。

しかし、そこで少女が「ん」と小さく唸って、目をパチリとあけた。
私も思わず目を見開く。

「な!あ!ちょ……!君!」
「ああ、温かかったのはこの人か〜…」
「!?」

少女は寝ぼけているのか、ぼそぼそと何かを呟く、そしてあろうことか私に抱きついてきた。

少女の腕を出来るだけ優しく剥がして、「起きてくれないか」と肩を叩く。
少女はやっと目を覚ましたのか、先ほどよりも大きく目を見開いて、


叫んだ。



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