「目がカピカピする…」

ごしごしと目をこする。
どうやら私は散々泣いた後、床に突っ伏して寝てしまったらしい。

のそのそと起き上がる。
相変わらず自分の死体は横たわったままだ。

足下に落ちている自分の顔に掛かっていた布を見てハッとした。
そう言えば、私はここに来て何も触れなかった。
それなのにこの布だけは触れた。
ということは、自分の死体を見るのは運命みたいな物だったのかもしれない。

それが何を意味するのかは解らないけど、少なくとも何か起こるはず、と信じたい。

そう言えば、夢を見た気がする。
どんな夢かは思い出せないけど、とても心地のよい夢を見た気がする。
それから、その夢でとても優しい、だけど悲しそうな声を聞いた気がする。


「あの声は………」



フランシスさん?


あぁ、行かないと、帰らないと。
フランシスさんが探してる。
今すぐ帰って、フランシスさんに会わないと。

帰る道も方法も分からないのに私はドアをすり抜け駆け出した。
病院、手術室、受付のカウンター、病院のいたるところを駆け回る。

戻りたい、戻りたいとひたすら叫んだ。
フランシスさんに会いたい。会って抱きついて、撫でてもらいたい。

ボロボロと涙が出た。

渾身の力を込めて屋上のドアを開ける。
そこにはコンクリートの床とフェンスではなく、一面に草原が広がっていた。

一瞬ぽかんとする。
ばっと後ろを振り向いてみると、さっき開けたはずのドアが消えていた。


「あ……」


もしかして帰ってきた?
フランシスさんのところに?

草原に踏み出す。
なんだか見たことあるような風景。
心臓がドキドキと鳴る。

暫く歩くと、家が見えてきた。
庭には綺麗なバラが咲いている。
そして男の人が水をまいていた。
間違いない。フランシスさんの家だ。
それから、あの男の人はフランシスさんだ。

「っ…フランシスさ………」


「フランシスさぁん」と情けない声を出しながら全速力で走る。
またボロボロと涙が出てた
途中で何度かこけそうになった。


「フランシスさあぁぁぁぁああんっ!」
「えっえ?えええっ!?」


何がなんだか分からなくて、おろおろしているフランシスさんに思いきり飛び付いた。
ドンッ!と二人纏めて地面に倒れ込む。
だけど私はお構いなしにフランシスさんにこれでもかというほど抱きついた。



!?
(ふ、ふらっ、フランシスさん!!!)
(っ………!!!!!??????)