さ、入って入って!
なんてその人は笑いながら言って(私の家なんだけどさ)、私は恐る恐る家に足を踏み入れ、その人の後ろをついていった。


そして二人向き合って座る。
さっきは誰?なんて思ったけど、落ち着いて見れば見るほど、その人には見覚えがあった。

ただ、友達とか、両親の生前の友達とかではなくて、(そうなら良いのに)
インターネットやテレビ、漫画でよく見た人で、つまり二次元のお方。この世界にいるはずのないお方。

すこし黄色がかかった髪の毛に紫の瞳、長いマフラーと長いコート。

それはそれは水道管がよく似合う、ロシア、いや、イヴァン・ブラギンスキ。


いや、でもいくら私がアニメが好きで、漫画が好きで、ヘタリアが好きでも、そんな二次元のお方が私の家に居るなんて信じるわけなくて

うん、きっとイベントに行く途中のコスプレイヤーさんが迷って私の家に来ちゃったんだ。そうだ、きっとそうだ!
ちなみに反対意見は認めないぞ!


「えーと、残念ながらイベント会場になるような所はこの辺にはないんですよー
きっと道を間違えたんだと思いますよ!
ってか今更ながら何で靴はいたまんまなんですか?」
「僕はロシアのイヴァン・ブラギンスキ、ここは何処だか教えてくれる?」
「ここは日本ですよ、ってオオオイ!!
ロシア?イヴァン?そんな事ないから!アナタなりきりすぎだから!」
「なりきり?なにが?僕はロシアだよ」
「ははは…またご冗談を…」
「ロシアに冗談なんてものないよ」
「……は、はは…」


あぁ、笑えないなぁ…


「それよりさ、ここ日本なの?
だったら本田君呼んでくれないかな?」
「本田菊は、いませんよ」
「え?」
「いや、本田菊さんはいるだろうけど、イヴァンさんが言っている本田菊はいませんよ。なんせ、世界が違いますからね」


あぁ、もう信じよう。信じてしまおう。
私の目の前にいる人がイヴァン・ブランスキだって。




そのあと、私はイヴァンさんに、ここはアナタがいた世界じゃないんだぜ!とか、アナタは二次元の世界の人で、この世界ではヘタリアって漫画に出てるんだぜ!とか、なんでこうなったのかは解らないんだぜ!とかいろんな事を説明した。(最初は大人しく聞いていたイヴァンさんだけど、なんか最終的に背景がコルコルして来て怖かった。)



「そうかー、じゃあ僕は帰れないんだね。じゃあ君の家に住むよ」
「へ?」
「だって帰れないんだもの、これからよろしくね。飯使いさん」
「え、ちょ!はぁ!?」


使
(私の家に住みませんか?とか言うのって普通私じゃないか?)
(ってか飯使いってなにさ!?)