気づけば私は真っ白な世界に一人で立っていた。
何故だ?何故なんだ?さっきまでフランシスさんと寝てたんじゃないのか?
なんか、前にもこんな事があった気がする。

「うーん、デジャブ」


しかし、どうしようかな。と考えていると、いきなりフッと浮遊間が襲った。
「え?」と思い足下を見ると、私の足下に真っ暗な穴が出来ている。
「わお!」と言った瞬間に私は穴に吸い込まれるように落ちた。



「うぎゃっ!」

それから直ぐにベショッと床にヘばりつくように私は床に着地した。のそっと起き上がり、回りを見渡す。
回りには沢山のベッドと、そこに寝ている人や、足や手にギブスを着けている人たちがいる。


「ここ、病院?」


立ち上がり、ここは何処か聞こうと足にギブスを着けている患者らしき人に話しかける。が、相手は何も反応しない。
ん?と思い、その人の肩を叩いてみるが、触れるどころかすっと通り抜けてしまった。

「うわ、なにこれ…?うわ、うわわわ!」


腕を何回も人につっこんでみるが、すり抜けてしまう。しかも相手は全く気づかない。
「ほあー、すげぇー」としばらくずぽずぽ手を突っ込んだり抜いたりしていたが、いや、今はこんな事してる場合じゃない。と自分に言い聞かせ、今自分が置かれている状況探索に出かけることにした。


病室のドアをすり抜け、廊下をふらふらと歩き回る。
さっきからもそうだけど、見渡す限り視界に入る人たちはみんな日本人だし、標識などの文字も日本語だ。ということはどうやらここは日本みたいだ。


「もしかして、戻ってきた…?」

もといた世界に。
ああ、それなら良かったじゃないか。これでまた両親にも会えるし。友達にも会える。
けど、私の身体は何もさわれないし、それに、もといた世界に帰ってきたってことは、もうフランシスさんには会えないってことだ。
「あー、それはやだなぁ…」

フランシスさんに会えないのは、嫌だな。
なんて言いながらフラフラしていると、あるドアの前にたどり着いた。
何だか、どうしようもなくそのドアに入りたい衝動にかられる。
私はよしと小さく呟いて、ドアの中に入った。

そこには、ベッドが一つあり、ベッドの上には誰かが寝ているようだ。顔には白い布が掛かっていて顔は分からない。
側にはロウソクと線香。

それを見て、ベッドにも寝ている人はもう死んでいるんだということがすぐにわかった。
本当は、こんな部屋すぐに出ていきたい。
だけど、ベッドに横たわっている人の顔を確認しなければいけないという気がして、部屋からは出られなかった。
恐る恐る顔に掛かっている布をめくる。


「あ」


布をめくった下には、見覚えのある顔があった。何時も見ている顔。自分だ。
自分が、死んでいる。


「私、死んでたんだ…」


はは、と乾いた笑い声が口からもれる。
まったく、

受け入れる余裕なんてないくせに
(知らないうちに涙が落ちた)