年寄りの話はちゃんと聞いとくもんだ、と私はしみじみ思った。 「聞いときゃ良かった…」 ホロリと涙を溢し(いや、雰囲気的な意味で)、私は日本刀を握り、古びた家の並ぶ村の様な所に突っ立つ。 なんて悲観に浸りながらも、私はこうなった経緯を考えた。 えーと、仏壇の部屋に行って、お供え物くすねようとして、で、なんか仏壇の横に飾ってあった今持っているこの日本刀(じいちゃん曰く家宝だとか)を手に取ったら、ピカーと光って今に至る。 回りには、釜やら包丁やらなんやら、奥さんもビックリ!な豊富なバリエーションの凶器を持った人たちが私をとり囲む。 みなさん「うぉー」だとか「殺せー」だとか唸ってらっしゃいます。 こんなとき、私が金を持っていれば、さっさと足許に置いて土下座して逃げるのに…、生憎今の私の所持金は100円だ。 小学生でも10倍は持ってるよねー。 てゆか、バチか!?バチが当たったのか!? いや、つかこの日本刀が原因なんだ!この家宝とかなんとかの!馬鹿!このお馬鹿! そういやずいぶん前にじいちゃんが言ってたぞ、「この日本刀は曰くつきでな〜、選んだ物を異世界に飛ばしてなんたらかんたら〜」なんて言ってたぞ!そのとき私は「ハイハイスゴーイチョースゴーイ」なんて棒読みでスルーしてたけど… 聞いときゃ良かった…! 畜生!と叫んでいる間にも、凶器をもった人たちがジリジリと近づいてくる。 どうやって逃げようか。いや、私にも凶器はある! 日本刀の使い方なんて解らないけど、振り回しときゃなんとかなるでしょ!と思い、柄を握って思いっきり引き抜く。が、 「………っっ、抜けねー!!!」 抜けないじゃん!なにこれ!使えねぇ! 何で抜けないんだ? そういやー、じいちゃんがなんかいってた気がするぞ!あの時を思い出せ! ―あの時― 「この刀は普段は抜けなくてなー、抜くにはー…」 「ハイハイスゴーイチョースゴーイスゴーイ」 「でなー…」 「ヤベーカッコイースゴーイ」 「〜…なんじゃ」 「フーンヘエー、あぁ腹減った」 ―終わり― 「私のバッカァァァァアン!!」 馬鹿馬鹿!くたばれあのときの私ィィィイ!うあああん!と私は自分の頭を日本刀の鞘で叩く。いてぇ… どうやったら抜けるんだろうか。抜けなければただの棒じゃないか…いや、まてよ!もしかしたら…呪文とか唱えたら抜けんじゃね? なんてファンタジーだと思うかもしれないけど、知らない間にいきなりこんなとこに居たのだって十分ファンタジーなんだ。 だったら、呪文とかもある得るかもしれない! 「よし、」 呪文と言ったらコレしかない。 「くらいやがれ!バンッ、カイッ!!!!!」 そう高らかに叫んでみたものの、刀には何の変化もなく、むしろ、あり得る訳もなく、 「だよね、そうだよね、どっかの週間少年漫画の主人公でもないんだから…あぁ、私頭わいてんのかも…」 ハハッ、と独りで自嘲気味に笑う。 回りの目が、私を哀れんでいるように見えて、私は思わず相変わらず鞘に収まったままの日本刀を振り回しながら、駆け出した。 「うあぁぁぁぁあん!そんな目で見るなぁぁあ!!!!」 がぎょっ!て人の首がよじれるような音がしたけどもう知らない! (じじいの話も大切なんだね!) |