「うぅ………」

「頭痛い…」と机に突っ伏す。友達が「風邪ぶり返したのー?」と私の頭を叩く。
いや、昨日のは君を中に入れないための嘘なんだけども。って頭痛いって言ってんのに何故頭を叩く友よ…!

「鈍器、鈍器で殴られてるよぅ…」
「あぁあ、もう、帰ったら?授業受けられそうな状態じゃないし。あ、何時もか」
「ひどい……」

それから私はうんうん唸りながら思い身体を引きずり、学校を出た。
家についてすぐに体温計を取り出し熱を図る。
すぐに音が鳴り、取り出すと38.8だった。


「おぉ、ヤバイ…」

イヴァンさんは今家にいない。どうやら何処かに出掛けているらしい。
私は、イヴァンさんが帰ってくる間、今日の晩御飯どうしようとか、イヴァンさんにうつさないようにしなきゃとか、風邪薬ないやとか、色々と考えていた。

「うぅ…、ちょっと、ねむい…」

だけど、風邪のせいでくるのであろう浮遊間と眠気で、私はそのままソファーに突っ伏した。




「ん……」
「起きた?」

目をあけると、飛び込んできたさらさらの髪の毛。
思わず、「わっ」と声を上げた。

「イヴァン、さん?」
「そうだよ」
「え、ここ、私のへや?」
「うん、そーだよ。僕が運んだんだ。帰ってきたら倒れてたんだもん。熱もあったし。びっくりしたよ」
「あー、すみません…」

謝るとイヴァンさんはふふっと笑って私の頭をふわっと撫でた。
何だかイヴァンさんにはおおよそあり得ない行動で、私はビビった。

「!?、いいいいイヴァンさん!?」
「なぁに?」
「何してるんですか!?」
「頭なでてるんだけど?あ、ボルシチが出来てるから持ってくるよ」

そう言って部屋を出ていくイヴァンさんの背中を見つめながら、私は「何だか優しすぎて色々怖いな」と思っていた。
イヴァンさん、何かの病気にかかっちゃったんだろうか。

「はい」
「あ、ありがとうございます」

イヴァンさんが帰ってきて、私にスプーンとあったかいボルシチを渡してくれた。(ボルシチって野菜がいっぱい入った味噌汁みたいな感じだ)

それをスプーンですくって口に運ぶ。
久しぶりに食べた他の人の料理の味と、はじめて食べたロシア料理の味に思わず、「おいし」と声が漏れる。

「でしょ?」
「イヴァンさんて料理出来たんですねー」

なんてからう様に言うと、イヴァンさんは何時ものようにコルコルコルコル〜とバックからダークマターを出し始めた。
良かった、何時ものイヴァンさんだ!

たまにはね!
(優しすぎると怖いけど、今日くらいは良いかもしれない)