目をあければ、そこはいかにも『監禁』って感じの部屋だった。
真っ白な壁、重そうな扉に小さな窓。
それからおまけみたいに私の手には手錠が。

ところで今までの状況を整理してみよう。
こんな時こそ冷静に、だ。

まず、私は学校に行く途中だった。
もうちょっと遡れば、二週間前にここ、アメリカに留学に来て、アメリカの学校で日本の友達とできたばかりの現地の友達で仲良くスクールライフを楽しんでいた。
とりあえず、学校に行く途中だった。
それがいつの間にやら、知らない部屋に居て、知らないお兄さんに興味本意で『T-ウイルス』なる物を身体に入れられ、しまいには「ゾンビになるよ★」なんて言われて、

私、すんごく不憫…

「ゾンビ…ゾンビになる前に美味しいケーキ食べたかった…!」

それから、それから、美味しい白米も食べたかった!パンには飽き飽きしてたんだ!
と叫んでいると、扉の窓からサングラスが見えた。

「ひっ!グラサン!!」

ガチャガチャとなにか鍵を外すような音がして、もしやまた何かぶっ刺さしに来たんじゃねーか!?とビクビク部屋の隅に逃げていたら、グラサンのお兄さんが入ってきた。

「ぎゃー!ごめんなさい!やめて!やめて!」
「ふむ、お前、身体に痒みはあるか?」
「ぎぁぁああああ!やめ……え?」
「痒みはあるかと聞いているんだ」
「い、いや、無いですが…。あ、そう言えば熱も引いたような…」

助かった?なんて思っているとまたお兄さんが私の前髪を掴んだ。
そして顔を近づけてまじまじと私の顔をみる。

「え、な、ちょ…」

なんですかちょっと!
って言うかこのひと凄くイケメンさんじゃないか!目は切れ長だし、鼻筋とおってるし、唇も綺麗…ってなに考えてんだ私ィィィイ!!!!
今の状況色々問題だらけだぞ!


「お前は、特異体質か…」
「はへ?」


特異体質?なにそれ?
特異って特別な異常ってことですか?

「ふむ、面白いな…着いてこい」
「は、はい」

お兄さんの後ろを着いて部屋をでると、昨日いた部屋だった。
まわりを見渡していると、お兄さんが「ここに座れ」と椅子を指差す。
おずおずと座ればお兄さんは私の顎を掴んだ。

「あひっ!?」
「じっとしてろ」
「え?え?っ…ふぎっ!」

ぶすっ、とお兄さんに綿棒をさされた。どこって、鼻の穴に。痛くて思わず悲鳴がでる。しかし、お兄さんは素知らぬ顔で綿棒を引き抜き、そしてその綿棒を何かの液体に浸している。

「……、ウイルスが消えている」
「は?」

なにそれ?と聞こうとすれば、お兄さんは何処からかゴム管と空の注射器をとりだした。
そして手早くゴム管を私の腕に巻き付け、手を握らせ、ブスッと注射器を突き刺す。そしてなんの遠慮もなく私の血を採血した。
私から取った結構な量の血を見つめてお兄さんは不適に笑う。そしてそれを持って何処かへ行ってしまった。

暫く呆然として、「あ、逃げなきゃ」と思った瞬間にお兄さんが嬉しそうに帰ってきた。
私のバカ野郎。なぜもっと早くに今がチャンスと気づかなかったんだろうか。
畜生!と後悔していると、お兄さんが私の前に椅子を持ってきて座る。
そしてこんなことを言った

「私は君の事が気に入った。今日から君は私の物だ」

そしてまたお兄さんは私の顎をつかみ、顔を寄せる。
また何か注射器でもぶっ刺されるのかと思ったが、それはなくて、ただ突然キスをされた。

「……………、はい?」

あれ?わたし悪くないよね?
(ならば何故私はこんなにひどい目にあっているんだろうか…!)