「もごっ…」


目を開けるとそこは、―


―知らない部屋でした。



「もっ、もー!ぐ、も!?」

叫んでも叫んでも声が出ない。と言うかこもる。何でかってそりゃ口にガムテープであろうものが張られているからだ。いや、この匂いはガムテープだ。絶対。
それから、私はいまベッドらしきものの上に寝そべっているのだが、どうにも腕が背中で縛られているので起き上がれない。
何てこったい!って言うかどうなってるんだこれは…!

「助けてー!」なんて叫んでみるが、口が塞がっているから「もごごー!」と言うなんとも情けない声しか出たない。
それでもめげずに身体を動かし、何とか逃げようとしていると、突然前髪をガッと捕まれた。

「ぐっ!?」
「まったく、さっきから煩いな」
「ぐ、ぐっ!?」

金髪オールバックにサングラス。
見た目からして何だか怪しい。
そんなお兄さん?(サングラスをかけてるせいか年齢がよくわからない)はくつくつと不気味に笑って、私の首に何かをあてがった。

「少し痛いだろうが、まぁ大丈夫だろう」
「っ!?ぐも!う!」

バタバタと暴れると「暴れるな」と一喝され、身体を押さえ込まれる。
逃げるにも逃げられず、どうしよう!と思った途端、首に何かが刺さった。そしてすぐに何か液体が流し込まれる。

「何かされた!」と呆然としていると、いきなり口のガムテープをびりっと剥がされた。痛すぎる。

「な、なにを…!?」
「コレをアジア系で実験するのは初めてなんだが…、君はチャイニーズか?」
「わ、私は、日本人で、す…けど…」
「ほぉ、日本人か…」


「そうか、日本人か!」お兄さんは、私の前髪を掴み、怪しく笑う。

「ついさっき君に投与したのは、T-ウイルスと言うものを改良し、発症時間をかなり短縮した物だ、しかもかなりの高濃度」
「T-ウイルス…?」
「まぁ、簡単に言えば、ゾンビになるウイルス、だな」
「ゾン、ビ…っ?」
「全身に痒み、発熱、意識レベルの低下。その後、大脳新皮質の壊死に起因する、知性、記憶の欠如と代謝の異常による食欲の増大…。ほらそろそろ身体が熱くなって来ないか?」
「っ、は…、ふ…ぅ…」
「そして、そのまま行けば、体細胞の分裂と壊死のバランスがあわなくなり、体が腐り落ちてしまう。」
「なん、で…そ、そんな…」

その問いかけにお兄さんはくつくつと笑い、「興味本意」と答えた。

「アジア系ではどんなデータがでるのか知りたくてね。君はなかなか可愛い顔をしているが…、ああ、この顔が腐り落ちるのは残念だ」

意味わかんない。と言ってやりたかったが、身体が熱いし、息がきれるし、ふわふわするしで、目を開けているのもしんどいくらいだ。
あ、身体が痒い。


なんか目がわらってないんだけど
(お兄さんは笑っているのに、サングラスの奥の目は、私を見据えて笑ってはいなかった)