あのあと、プロイセンとスペインはこれでもかと言うほどお酒を飲んで、ベロベロに酔って二人で肩を組んで帰っていった。
そんな二人のおかげで部屋は酒瓶やらなんやらで散らかっている。
その真ん中で「フランシスさーん」とへらへらとなまえちゃんが顔を真っ赤にして笑っている。
どうやらお酒を飲んでしまったらしい。

「なまえちゃん」
「えへへ、お酒、飲んじゃいましたー」
「駄目じゃん、まだ未成年なんだから」
「えへへー」
「笑って誤魔化してもだめだよ」
「んー、フランシスさん」
「なぁに?」
「なにか、あったんですか?」
「え?」

「なんで?」と思わず言ってしまう。
するとなまえちゃんは手を伸ばして俺の頬を触った。

「フランシスさん、泣きそうな顔をしてます」
「そんな、こと、ないよ…」
「なくないですよ、わかりますよ」
「…気のせいだよ」
「気のせいじゃないです、フランシスさんの事なら分かりますよ。何かあったんですか?私で良いなら聞きます。なんだって!」
「なまえ…ちゃん…」


思わず、なまえちゃんをぎゅと抱き締めた。
暖かくて涙が出そうになる。

「フランシスさん、」
「俺、俺ね…」
「はい」
「26じゃないんだよねー」
「はい」
「あと、日本語話せないんだー」
「はい」
「っていうかさ、人間じゃないんだ…」
「はい」
「俺は、フランスって言う国で、何故か人間の様なカタチをしてて、でも人間じゃないんだ」
「はい」
「…信じてもらえないかもしんないけど、ううん、気持ち悪いよねー、こんな話…」
「私は、フランシスさんの事信じますよ!全部!」
「え?」
「フランシスさんは私の事信じてくれました!だから、私もフランシスさんのこと信じます!っていうかですね!フランシスさんが26じゃなかろうが、日本語喋れなかろうが、人間じゃなかろうが、どうでも良いと思いませんか!?なんであろうと、私はフランシスさんのこと、好きですよ!だ、だから、だから…」
「え、な、ちょ…なまえちゃん!?」
「だから、そんな泣きそうな顔しないでくださいよぉぉぉぉ…!バカ!バカ!フランシスさんのばかぁぁぁぁぁあ!!!!」

うぁぁぁぁあん!となまえちゃんは泣き出した。

「ごめんね、うん、ありがとう」
「ふら、フランシスさんの、おお、おバカぁぁぁあ」
「うん。ねぇなまえちゃん、」
「何ですかぁぁぁあああ!」
「酔ってる?」
「よよ酔ってなんかないですぅぅう!」
「んー…じゃあ俺の事、好き?」
「すす、すす好きですよぉぉお!なに言わせるんですかぁぁぁあ!」
「じゃあ…、キスしていい?」
「いいですよぅぅう!」

「そんな事聞かないでくださいぃぃ!」と泣きじゃくるなまえちゃんの頭を撫でて、そっとキスをした。
酔ってるのを良いことにキスなんてズルいかな、と思ったけど、止められなかったから仕方ないしね。

それから、なまえちゃんが泣きつかれて眠ってしまうまで、ずっと俺はなまえちゃんを抱き締めていた。

もし、明日なまえちゃんが全部忘れてたらどうしようとか思ったけど、多分なまえちゃんのことだから、酔ってなくても今日と同じ事を言ってくれると信じて、俺もそのまま目を閉じた。


キスしたかったから
(したはいいけど、もし殴られたらどうしようか…)