こぽこぽとお湯の注がれる音とコーヒーの匂いが実験室に広がる。

「あー、いい臭いー!はい、どうぞー」

私は(勝手に)入れたコーヒーを女の人と先生に渡す。女の人はニコリと笑って「ありがとう」と言ってくれた。

「いえいえ。そういえば、名前聞いてなかったです。あ、私はみょうじなまえです」
「なまえさん、ね。私は貝塚北署の内海薫です」
「内海薫さん!おぼえた!」

「内海さんは美人ですねぇ」「えっそんなぁ」「いやいや、街歩いたらナンパとか凄いでしょー?」なんて 私と内海さんが仲良く話している時、「…ところで」と先生が口を開いた。

「君はなぜここにいるんだ?」
「だってさっき会ったから!」
「何ぜ勝手にここに来て、勝手にコーヒーを入れているんだ?」
「まぁまぁお気になさらず!」
「しかもまだ昼間だが……学校は?君はまだ学生だろう?」
「テスト前で学校が早く終わったんですよ」
「そして、このことは遊びじゃない」

先生にそう言われて、ぐぬっと言葉がつまる。「分かってるよ、でもさ!」私はバッととりあえず思ったままの事を言った。

「気になるんですよ!」

キリッと先生を見据えてそう言えば、先生は「はぁっ…」っと大きなため息をついた。

邪魔はしない!見てるだけでいいからお願い!と手を合わせて一生懸命に懇願する。すると、先生は一瞬、「ぐっ」と唸り、渋々と言うように口を開いた。

「まぁ、少しなら良いだろう……」
「ほ、ほんと?ありがと先生!」

嬉しくて「大好き!!」と先生に飛びつくけば、先生は「なっ……!」と焦せりったような声を出した。

「みょうじくん!?」
「んふー、先生いいにおい……」
「離れろ!」
「嫌です!」