「あーあ、まったく、何でああ纏まらないかなー」

何時もながらのグダグダな会議を終えて、家路に着く。

イギリスはアメリカに、アメリカはイギリスにちょっかい出してばっかりだし、日本は「善処します」しか言わないし、スイスは切れるし…
お兄さんの美しい顔に銃弾が当たるかと思ったよー。


ネクタイを緩めて、今日は女の子でも呼んで鬱憤を晴らそうか、と思いながら寝室のドアを開けると、異様な物が目に入った。

自分のベッドの上に、人が寝ている。


「え、ちょ、だれ!?」

恐る恐る問いかけてみるが、答えはない。
どうやら寝ているようで、
ごくっと息を飲んでそーっとベッドの上にいるものに近づいた。

それは、まるで水兵のような服を着た黒髪の少女だった。

容姿からして日本人、もしくは中国か韓国…とにかく亜細亜系だと思われるが、その辺の女の子とは、幾らか喋った事があるだけで、電話番号、ましてや自宅を教えた事は無かった。

「こんな子、知らねーぞ…」


口元を押さえながらそうつぶやくと、少女が「ん」と唸ってから、寝返りをうった。
そして、パチッと目を開く。

起きた。と思ったら、弾かれたようにバッと跳ね起きる。「あ、あわ、わわわ」と何だかよくわからない言葉を発して、それから自分の身体中をぺたぺたと触って「い、生きてる」と呟いた。

そして俺に気づいた。


「あわわわわわわわ…」
「ん?」
「外国人さん!だ!」
「ん?」


泣きそうな目をされていきなり叫ぶから、ビックリして、もう一度聞き直すと、少女は全く聞いておらず、「えええ英語なんか話せないよおぉぉぉお」なんて叫んでいる。

「英語なんか話せない」と喚くわりには、俺とは話せているじゃないか(いや、まぁ、フランス語なんだけど)。

まぁ、ウダウダと悩んでも仕方ないので、少女に「ちょっと、色々聞かしてくれる?」と言った。




色々聞いた所、少女の名前はみょうじなまえ、日本人。
そこまでは至って普通なんだけど、不思議な事はここから先だ。
少女、なまえちゃん曰く、学校から帰る途中に事故にあったそうだ。しかも、普通なら生きていられない程の。
本人から聞いた話は、あまりにもリアルでグロテスクだった。
それから何故ここに居るかは不明。
あと、言語は日本語しか喋れないらしい。


普通なら信じられないような話だが、話している内にだんだん泣きそうになりながら鼻をすするなまえちゃんを見ていると、信じざるを得なくなってきた。

うーんと考えていたいると、目の端を赤くして、「これからどうなるんだろう」と不安げな顔をしたなまえちゃんが視界に入る。
フッと息をついて、なまえちゃんの頭を撫でて「俺が何とかなるまで一緒にいてあげるよ」と言うと、ふわっと嬉しそうな顔になった。

そのふわふわしたな顔に、俺は不覚にもときめいてしまった。
ものすごくかわいいな、この子、と。


不覚にもときめいた
(なんだか、ずっと守っててあげたくなっちゃうなぁ…)