バキッ ボキッ ゴッ

漫画の、骨が折れるような効果音が、自分の体の至る所から聞こえて、それから体が宙に浮いた。そして、道路に叩きつけられる。
またボキッと音がなった。

視界が真っ赤に染まる。
自分の手の感覚がない。
感覚がない手を、どうにか自分の目の前に持ってくると、手も真っ赤。

これは、トマトジュース頭からかぶったんだぞ★とか、そんなギャグ言えないぞ。


ビリビリする体にじわっと痛みが沸いてくる。

「痛い…」と口に出したつもりが、唇は少しも動かず、声どころか、吐息にもならなかった。



どうやら、私は車に轢かれたらしい。しかも轢き逃げ。やになるよね、
横断歩道、ちゃんと青信号で渡ったのに。右左も一応見たのに。


ビリビリ、ズキズキ、クラクラ
色々混じって、何だか目の前が霞む。
「私、死ぬのか」と直感的に思った。

でも、死ぬのは怖いと思わなくて、
冷蔵庫の中のプリン食べたかったとか、ハーゲンダッツ買っておいてあったのにとか、お母さんのヘソクリ見つけたから使ってやれば良かったとか、そんなくだらない事ばっかりを考えていた。

最後に、本当にプリンは、食べたかった…!
と思ったら、私の意識はふわりとどっかに飛んでいった。





(世界はいとも簡単に)
(なんて、あっけなくて、アホな最後なんだろうか)