「もごっ…」

目を開けるとそこは、ー


ー知らない所でした


「ふん!?ふもっ…ふーーー!?」


な、何だこれ、ちょっとまって、どうなってんの?理解できないんだけど?
口がふさがってる。この匂い、ガムテープ?それから、両手が背中の後ろでガッチリ束ねられている。

え、ちょっとまって、前にもこんな経験したんですけど私。

まあちょっと違うのは私が着ているのが制服じゃなくて、白いワンピースで、今現在芋虫のように転がってる場所がベッドじゃなくて硬い石畳の上だと言うこと。

それより、私は家で寝てたはずなんだけど!服もパジャマだったのに 、いつの間にか真っ白なワンピース。

どういうことこれ?とこんがらがる頭で考えていると、ギィと軋んだドアの開く音がした。
誰かが入ってきたんだ。
コツンコツンと足音がして、私の前で止まる。

「ふご…」
「起きたか」
「も、もごーー!!もご!もごごーー!!!」

そう、入ってきたのはウェスカーさんだった。
「どういうことだこのやろーー!!」と塞がれた口で訴える。
ウェスカーさんはニヤニヤ笑って、私の口のガムテープをびりっと剥がした。

「ッターーー!もうちょっと優しく剥がせないんですか!?というかなんなんですか!?これ!?意味わかんないんですけど!!」
「もうちょっと落ち着けないのか?」
「落ち着いてられるか!!」

ガウガウと噛み付くようにウェスカーさんをまくし立てても、ウェスカーさんは「全く落ち着きがないなあなまえは」と呑気にいうだけだ。

「なあなまえ、思い出さないか」
「何をです?てかこの腕の拘束をとっていただきたいです」
「私達が出会った日のことだ」
「ああ、思い出しますね。あれは私のトラウマですしね!ていうかだから拘束とってくださいよ」
「え?トラウマ?すごいいい思い出じゃないのか?」
「どうやったらあれがいい思い出になるの!?てか意地でもこの拘束は取らないんだね!」

もうやだこのおっさん話し通じないよ。とメソメソしていると、ウェスカーさんは冗談だと笑って私の両腕の拘束を解いた。

「二人の思い出を再現しようと思ってな」
「トラウマを再現されても困るんですけど。ていうか、何がどうしてこうなったか説明してくださいよ」
「ん?ああ、なまえを連れてきたいところがあったから、爆睡していた名前を勝手にヘリに乗せて勝手に連れてきた」
「そんなのだったら起こしてくださいよ!」
「せっかくだから二人いい思い出の再現しようと思って」
「だからトラウマですってば。てか私パジャマでしたよね?」
「ああ、それは私が着替えさsゴハッ!」
「変態」

みぞおちあたりに一発
寝ている女の子の服を勝手に着替えさすとはどういうことだ。
と言うかまて、私そんなことされても起きなかったのか……爆睡しすぎにもほどがある。

「ご、ごほん、まあ許せ。私と名前のなかじゃないか」
「それ以上いかがわしいことしてませんよね?」
「して、ない」
「一瞬とまったな」
「……、頬にキスした」
「うぇっ!」

べっ!っと顔をしかめて舌を出せば、ウェスカーさんはそこまで嫌がる事ないじゃないか、と肩を落とした。

「まあ、いい。なまえ、行こう」

ウェスカーさんがスッと手を出すので、その手をつかむ。
するとひょい、と抱きかかえられた。

「ちょ、ウェスカーさん!」
「まあ、気にするな」

そのまま部屋をでて、階段をおりて長椅子が並んでと祭壇らしきものがある場所でそっと降ろされる。

「もしかして、ここ教会ですか?」
「ああ、そうだ。今はもう使われてないが」
「へえ…、キリスト教、ですか?見たことない紋章みたいのがあるけど」
「いや、この土地の民族宗教だ」
「いったいここどこなんです?」
「スペイン」
「す、スペイン…また遠いとこまで!というか、連れてきたいとこってここなんですか?」

そう聞くと、ウェスカーさんは「ああ」と言って、どこから出したのか、白いレースを、私の頭にふわりとかけた。

「え、ええ!それどこから出した!」
「いや、ずっとそこに置いてた。というか突っ込むのはそこか!もっと可愛い事を言ってもいいだろう!さすがなまえ!雰囲気もくそもないな!」
「なんだそれ嬉しくねー!」
「いや、以上雰囲気を壊すのはやめよう」
「はい」

む、と両手で自分の口を押さえる。なんだかそうでもしないと雰囲気のふの字もなくなることを言いそうだ。

「教会といえばすることは一つだろう?」
「え、懺悔?」
「雰囲気がまたどっか行ったぞ」
「あ、すみません」
「まあいい。なまえ、その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、
これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを、なまえに誓おう」
「は…?」
「私と結婚してくれないか?」
「え、ええ?その、えっとー、嫌って言ったら?」
「答えはイエスかはいだ」
「拒否権ないじゃん!」

いきなりの展開に、ついていけずぐるぐると頭が回る。
結婚?ウェスカーさんと?私が??

「う、あ、あの、ウェスカーさんが悪いことしないなら、します…!」
「ああ、約束しよう」
「あ、あの、ふ、ふつつか物ですが、よろしくお願い、します」

ウェスカーさんの顔をが、何だか恥ずかしくて見れなくて俯いていると、ウェスカーさんの大きな手が私の左手をとって、指に何かをはめた。

「わ、あ」

小降りのキラキラした石が付いた指輪。それが自分の左の薬指で光っている。

「綺麗!」
「似合うと思ったんだ」
「ありがとうございます!うわあ、私……」

何だか今の気持ちがうまく言い表せない。心のそこから、何か暖かいものが溢れてくるきがする。


「ウェスカーさん、意味わかんない事するし、私は神になるとかバカみたいなこと言うし、でも人参嫌いだし、私がお風呂入ってると覗くし、通販でコスプレ買かっては着させようとするし、変なこと思いついては私を巻き込むし、ポッキーゲームとかいい例だし…」
「お、おい、そんなに私はひどくないと思う…ぞ…?」
「ひどいですよ!でも、でも私はそんなウェスカーさんが、大好きです」
「なまえ……!」


ガバ!っとウェスカーさんが私を抱きしめる。ちょっと、びっくりしたけど、私もそのままウェスカーさんの大きな背中を抱きしめ返す。それから、どちらともなく触れるだけのキスをして笑いあった。


愛し合う二人なら当然でしょう?
(なまえ!今すぐ帰ろう!帰って寝室で二人熱く愛し合おう!!オゴッ!)
(はぁ、ウェスカーさんも対外雰囲気ブレイカーですよねぇ…)


the end?