「しまった、シャンプーがない」

スコッと何回押しても何も出ないシャンプーボトル。
あー、そうだ無かったんだ、と今になって思い出す。
たぶん、買い置きが階段下の物置にあったはずだ。

「シャワーあびちゃったし」

今から体を拭いて取りに行くのは面倒くさい。かと言って、全裸で物置まで行くのは嫌だ。

仕方ない。ウェスカーさんにとってもらおう。

そう思ってバスルームのドアを開けて、顔だけヒョッコリだす。そして「ウェスカーさん!」と読んだ。
すぐに、グラサンがリビングから「何だ?」と顔をだす。

「すみません、物置からシャンプーとってくれます?」
「わかった」

おとなしく返事してシャンプーを取ってくるウェスカーさん。いや、何だ、気持ち悪いぞ。

「ほら」
「ありがとうございま…ってなにしてんですか」

お礼を言いつつバスルームの扉の閉めようとすればガッチリホールドして閉めさせてくれない。くそ、びくともしないぞ!

「くっ、なんなんですか?」
「いや、まさかなまえから誘ってくるとはな」
「は?何のことでしょうか?」
「私が最近なまえの入浴姿を覗かないからって、寂しくてシャンプーをだしにするとは…言ってくれればいつでも行くのに。ああ、まあそういうのが素直に言えないのがなまえの可愛いとこだが。しかし、覗かれたいなんてなまえもいやら…」
「いっぺん病院行ってこい」
「ゴッハッ!」

ペラペラと意味の分からない妄言を話し続けるウェスカーさんの鼻っ面に拳を入れる。
「ああ!」と悶えているうちに素早く扉を閉めて、鍵をかけた。

さぁ、ウェルカム私のリラックスバスタイム!

そんなの一言も言ってない!
(なまえ!せっかくだから一緒に入ろうじゃないか!)
(ぎゃー!なに入ってきてんだ!ていうか鍵かけたのに!)
(そんなもの私に通用するとでも?)