人肌の恋しい季節、というのがあると思う。
緑の葉っぱが茶色くなって、夕日がとても綺麗になって、それから風がすこし、冷たくなる季節。


今日は町に出た。
ショーウィンドウにすごくかわいい秋物のスカートやトップス、ワンピースが飾ってあって、私は思わず見とれた。
いいなぁ、かわいいなぁ、買っちゃおうかな?
これ買ったらウェスカーさん、怒るかな?
なんて考えていると、私のすぐそばでかわいい女の子の声がした。


「わぁ、このワンピースすごく素敵!」

横をみると、綺麗なプラチナブロンドの髪の毛の女の子が、ショーウィンドウをきらきらした青い目で見つめて、たぶん彼氏なんだろう、とっても素敵な男の子に楽しそうに話しかけている。
男の子は、それまた素敵な笑顔で「うん、君にとても似合うと思う」と笑って、それから2人は手をつないで店に入っていった。


「……いいなぁ」


ああやって、手をつないでデート、とかしてみたい。
私だって年頃の女の子だし。
でも、生憎相手がいな…


いや


「ウェスカーさん…」


いや、まてよ?
なんというか、思えば私とウェスカーさんの関係って何だろう?
一緒に住んでる人?
でも、キスもしたし、まぁ、その、それなりのこともした。
じゃあ恋人?
うーん、なんか違う気がする。


拉致犯とその被害者?
うん、そうだ。それだ。


「なんでだろ、すっかり忘れてた…」


がくり、と肩を落としてショーウィンドウに背を向ける。
もうワンピースなんて見ている気分ではなくなった。

それから、なんだか暗い気分のままバスに乗り、もよりのバス停に着き、短いバス停から家までの距離をとぼとぼと歩いた。



「だたいま…」

ドアを開けて、部屋に入るとすぐにすごい足音がして、ガラサンいや、ウェスカーさんがやってきた。

「ああ、なまえやっと帰ってきたか!なまえに渡したいものが…どうした?何かあったのか?」
「え?べつに、なんにも無いですよ。で、なんですか?またコスプレ買ったんですか?次は何ですか?」
「あ、ああ、いや、今回はコスプレではないんだ」


そういってウェスカーさんが綺麗に包装された包みを私に渡す。
コスプレじゃないなんて、珍しい。いや、でもウェスカーさんのことだからコスプレ以外のなにかいかがわしい物かもしれない。
と思いながら包みを開けた。


「わ、」
「どうだ?」


包みを解くと出てきたものはワインレッドの綺麗なワンピースだった。
袖と裾には控えめに黒のフリルが施してある。
決して派手ではないけれど、とても可愛い、乙女心をくすぐるデザインだ。


「すごい、可愛い」
「気に入ったか?」
「はい!でもどうしてこんな、また変なものかと思ったけど」
「今度、それを着て二人でどこかへ行こう。そうだな、デートというやつだ!」
「デート…?」
「そうだ!」


「愛し合う二人ならして当たり前だろう!」とニヤニヤと笑いながらウェスカーさんは私
の頭をぐしゃりと撫でた。
私は、なんだか町から今までうだうだと悩んだのが、なんだかとてもバカらしくなって、笑った。


「そうですね、デート!しましょう!」
「な、なんだ、やけに素直だな今日は…」
「えへへ、ツンデレのデレですよ!」
「そ、そうか…?」
「あの、ウェスカーさん!」
「なんだ?」
「ちょっと、抱きついてもいいですか?」
「!?、ああ」


むしろどんどん来ればいい!
(あー、私何悩んでたんだろう!バカみたいだなぁ)
(なんか、デレすぎてちょっと怖い……)