私は先生のプライベートに首を突っ込むしょうのない生徒である。 今日も教科書を持って高崎先生が待つ教室へ向かう。 心が痛くなるのはわかっているのに、この時間が楽しみで仕方ないのだ。 教室のドアに手をかけてガラッとあける。 「先生!今日はいいものあります よ〜!」 馬鹿みたいに大きな声で笑ってれば大丈夫。 自分にそう言い聞かせる。 「おー、来たか」 「えへへー、今日は桜井先生がこける瞬間を捉えましたよ」 そういいながら携帯のデータフォルダを開いて今日撮った写真を高崎先生に見せると「かわいいじゃねぇか!」と頭を抑えてもだえだした。 私はそんな先生をパシャっと携帯におさめる。それに気づいた先生は「おいなにしてるんだ!」と私の携帯を奪おうとする。 「あ、やめてくださいよー」 「俺の変な姿撮ってどうするんだよ」 「先生の変顔フォルダつくるんですー!」 「おいやめろって」 「桜井先生の写真あげませんよ」 「そんな脅しには……うっ」 「すみませんでした!」と謝る先生に「うむ」と上から目線で返事して「携帯の赤外線をこちらにむけよ」と言った。 先生の携帯と私の携帯をくっつける。 その時、私は馬鹿みたいだが、先生と私が手をつないでるみたいなそんな錯覚におちいる。 「お、届いた」その言葉を合図に携帯を離す。 私たちを繋いでるのは桜井先生なのだ。 「ふふー、どうですか?」 「い、イナフッ!」 「いや、意味わかんないですよ」 写真一枚に大喜びする高崎先生を尻目に、国語のテキストを開く。 すると、ぽふっといきなり頭に何かがのる。先生の手だ。 「なにしてるんですか?」 できるだけ平静を装って先生の顔をみる。すると先生は「いつもの礼だ」とニッと笑った。 「は?」 「よし、そのままストップだ」 「え、ちょっと意味がわから…」 ポロっと頭の上から何かが落ちて机に転がる。 小さなイチゴの模様が転々とプリントされたビニールに包まれたこれは… 「飴?」 「おう、嬉しいか!?」 「まぁ、好きですけど」 「問題、正解したらもう一個やるよ」 「えー、小学生じゃないんだし」 「いらないのか?」 「…いる」 「よしよし、頑張ってとくんだぞ」 私の髪の毛がぐしゃぐしゃになるのも気にせずに大きな手で私の頭をわしわしとなでる。 「子供扱いしないでくださいよ!」と照れ隠しに叫ぶが「俺からみればまだまだ子供だ」と笑われた。 そのあとは、ドキドキと煩い心臓の音を聞こえはしないかと心配しながら先生の話しを聞き、テキストをめくるのだった。 |