※拉致って番外


「よーしキスするぞ」

バッと手を広げてそう言うウェスカーさんに私は「はーい」と抗議の手を挙げた。

「ちょっといいですかー?」
「なんだなまえ」
「今なんて言った?」
「キスするぞ」
「え?今なんて言った?」
「キスするぞ」

もうヤダこの人。なにそれ。「キスするぞ」ってなにそれ!ムードもへったくれもないんですけどー!そんなの言われてもこっちは困るんですけどぉー!!

「え、え、ええと、ウェスカーさん?何でいきなりそんな事を?」
「ああ、良くぞ聞いてくれた!何故なら今回はバレンタインデー企画でキスをテーマにゲロ甘な」
「バカぁ!ウェスカーさんのバカァ!そう言う事言っちゃいけないって!!暗黙の了解でしょうが!!」
「いや、むしろこのシリーズのみメタ発言を許されている」
「ばんなそかなっ!」

がっ!と頭を両手で抱えて「他の!他の人たちのお話はまともに甘いのに!」と嘆いていると、ウェスカーさんがポンと私の肩に手をおいて「まあそう嘆くな」と優しい声音でそう言う。

「う、うう、ウェスカーさん」
「優しくしてやるさ」
「う、うう、」

ウェスカーさんの大きな手がそっと肩から首を伝って、私の頬を撫でる。そしてウェスカーさんの口が私の耳にそっと近づいて一言

「なまえとキスがしたい」
「ーッ」

そっと優しくそういわれて、軽く耳にキスされると、かくんと身体から力が抜ける。フフッと笑う声がした。ウェスカーさん、絶対意地悪い顔して笑ってる。
「もう!」と反論しようとしたが、その前にひょいっといとも簡単にウェスカーさんに抱えられて
、ソファーへと移動する。
そしてソファーにおろしたと同時に、ウェスカーさんはカプリと私の首元に噛み付いた。

「なっ、あ!」

ちゅうっと少し強く吸われる感覚がする。そこ、ふっつーに見えるところじゃん!


「も、それはないですよっ!」
「ふっ、顔が真っ赤だな」
「うるさい!」
「それより、今回くらいなまえからキスしてくれてもいいと思うんだが」
「は、はぁ?」

何言ってんですか!と言えば、ウェスカーさんは笑って「何ってそのまんまだ」と言う。まあ、そうだろうけど!
でも、こういう甘い事はあんまり、というかほとんど自分からはしない。なんでって恥ずかしいからだ。ウェスカーさんからの一方的なスキンシップだって、その、まあ照れるのに自分からだなんてそんな事はできるわけがない。
ので、私は「無理無理!」と首をブンブンふる。が「無理じゃないだろう?」とウェスカーさんは諦めない。それでも「むりですって!本当に!」と言い続ければウェスカーさんは「そうか」と残念そうにため息をついてこう言った。

「そういえば最近新しい薬を作ったんだがな」
「すればいいんですか!」


それ、本当にずるい。

「じゃあ!目をつぶってくださいよ!!」
「わかったわかった」

楽しそうにそう言って目を閉じるウェスカーさん。私は一つ深呼吸をして、思いきってそうっと自分からウェスカーさんの唇に軽いキスをした。
よし終わり!もう終わり!とサッと離れようとするが、それは叶わず、ウェスカーさんの大きな手が私の頭を抑えて、そのまま深く口付けられる。

「っ、ん……ふ、ウェスカさ、」
「なまえ……っ」
「んぅ、ふ……ぁ」


ウェスカーさんの舌が私の口の中で暴れて、すみずみまでかき回して、恥ずかしい。恥ずかしすぎて頭が爆発しそうだ!てか、まって息ができない。どうやって息するんだっけ。あれ、あれれ、あ


「はぁっ、なまえ……?」
「…………」
「なまえ?おい、なまえッ!……き、気絶してる……」

かわいくキスして
(もうしばらくはキスなんてしません)
(本当にすまなかったと思ってる……)
(しま!!せん!!!)
(なまえ……!)