10月31日と言えば、ハロウィン。
日本人の私にも馴染み深いイベントである。

近所の子供達がお化けに扮して「トリックオアトリート!」と言ってお菓子を貰いに家をまわっている姿を見は、なんとも可愛らしくて頬が緩む。

が、正直なところ私としてはさっさとこのハロウィンは終わって欲しい限りだ。
何故ならウチにいるでかい子供がいつよりも倍にうざくなるからである。

ソファーに座ってはあ、とため息をついたと同時にリビングのドアがばーーんと大きな音をたてて開いた。きたよでっかい子供。

「なまえ、トリックオアトリート!さあ菓子かイタズラかどちらをとる!?もちろんイタズラでアウッ!」

べシーンと先ほど入ってきたでかい子供、否、グラサン野郎、否、変態グラサン野郎の顔に飴玉を投げつけてやる。
いい感じに鼻に当たったのか、ヒーヒー言っている。ざまあ。

「さあ、グラサン…ちがう。変態、お菓子は渡したのでさっさと帰るべき場所におもどり」
「なまえ、私の名前は変態ではなかったきがするが」
「え、まじ?」
「ああまじだ」

「それよりハロウィンだぞー」と変態、ウェスカーさんがぎゅーっと後ろから乗っかってくる。そして何かを私の頭に着けた。

「何つけたんですか」
「おお、似合ってるぞ」
「何って聞いてるんですけど」
「可愛い猫耳だな!」
「またそんなしょうもないもの買ったのか!」
「しょうもない物じゃない。これは凄いぞ!なまえの脳波に反応して耳が動くんだ!日本は本当に恐ろしい国だな…!」

何だと?また日本か!私が知らない間にどんどん変態アイテムを増やしやがって!

「うー!」っと私が不機嫌に唸るとウェスカーさんは「すごい、耳がへたった!」と喜んだ。まじで反応してんのかよ!!!

「ていうかウェスカーさん!私は飴あげたのにイタズラされるって可笑しいと思うんんですけど!」
「ん?これはイタズラじゃなくて、仮装だ!ハロウィンと言えばやはり仮装だろう!」


いや、あなたハロウィンとか関係なしにこういうの私につけさせますけどね!という言葉は飲み込んだ。言ったところで多分何も変わらない。

「じゃあ私だけこんなのつけて、ウェスカーさんは何もしないのは可笑しいです」
「おお、そうか」

「ちょっと待ってろ」と言ってウェスカーさんが部屋に戻ってゆく。そして、30秒もしないうちにまたバタバタとリビングに入ってきた。

「そうだな、なまえが猫なら、私は狼だ!」
「いや、ちょっと意味わかんないっす」

ドヤ顔で頭に大きくてふさふさの灰色の耳を着けて現れたウェスカーさんに突っ込む。
が、そんなことも気にせず私の隣に座ってくるので、突っ込むのはやめにしよう。

「ああそうだこれをやろう」
「なんですか?カップケーキ?」

ぽん、と手のうえにおかれたのは袋に入ったカップケーキだった。外国らしいピンクのクリームに色とりどりの砂糖菓子のトッピングが乗っている。

「ハロウィンだからな。子供に菓子をやるのはあたり前だろう」
「ウェスカーさんには言われたくないんですけど……」

じとっと横目で睨むと、ウェスカーさんはフッと口の端を挙げて笑う。

「でも嬉しいんだろう?耳がうごいてるぞ」
「ああしまった!そういえばそんなものつけてた!」
「これをつけてる限り嘘はつけんな」
「まあ、いいですよ。今日だけです。カップケーキが嬉しいのは本当だし…。あ、これ食べていいですか?」
「あ、ああ」

カップケーキを袋から取り出して、かぷりとかじる。甘い。なんというか、やっぱりこっちのカップケーキは日本のとは違う。この甘ったるさとか、すごい……

「って、ウェスカーさん?なに見てるんですか?」
「いや…、なんでも。美味いか?」
「え、まあちょっと甘いですけど、美味しいですよ」
「そうか、じゃあもっと食べていいぞ」
「?、はい」

もう一口かじる。何だ?何?何か変じゃね?ウェスカーさん変じゃね?なんかニヤニヤしてね?

「な、何なんですかウェスカーさんっ…ってか、何、これ体、あつ……」

急に体が火照って、なんだかムズムズする。可笑しい。チラリとウェスカーさんを見ると、ニンマリと嬉しそうに笑っている。

「早いな、さすが即効性だ」
「え?な…ひゃあっ!」

つつっとウェスカーさんの指が私の頬を撫でると、びくんと体がびくついた。

「な、なにこれ、あ、ひゃっ…ウェスカーさんっ…さわんっ、あっ」
「実は、さっきのカップケーキには媚薬が入っててな」
「え?びやっ…えぇえ!?」
「つまりはそういうことだ!」
「わけがわかんないんですけどっ…!」
「これが私のイタズラだ」

ニヤッとわらってウェスカーさんは私を抱き上げる。確実にこれは寝室に向かう気だ。
ていうか、ちょっと待ってよ

「私っ、飴あげましたよね?」
「……、忘れた」
「っ……!」
「さあ今日はハロウィンだぞ!2人で甘い時間をすごそうじゃないか!」
「いみ、わかんないっ…!!」


甘いものにはご注意を
(耳がピクピク動いてるぞ!)
(ちくしょおおおぉお!)