「レオンさーん!トリックオアトリート!!」
「お、なんだなまえ」
「今日はハロウィンですよ!!という事でお菓子かイタズラ、どっちか選んでください!」

二ッとなまえが笑って手を差し出す。お菓子かイタズラと聞いているが、お菓子の方を期待しているのが分かる。
それが可愛くて、くすっと笑う。

「一つ聞いていいか?」
「いいですよ!」
「お菓子が無かったら、どんなイタズラをするんだ?」

そう聞くと、なまえは「うーん」と少し考えて、「ハニガンさんにレオンさんがセクハラするって電話します!」と言った。
それはちょっとジョークにならない。そんな事をしたらハニガンはきっと事情を確認する前に俺を殺しに来るに違いない。


「そのイタズラは困るな…。何かお菓子は…、ああそうだガムがあった」

ポケットからガムを取り出して、なまえの手のひらに乗せる。するとなまえは「ミントガム…」と少し不服そうに呟いた。

「ダメか?」
「もっとお菓子って感じのを期待してたんですけど…、まあいいでしょう!」

「今回は見逃してあげます」と笑うなまえ。
そのとき、俺の頭にピンといい事が思いついた。


「じゃあなまえ、俺からもトリックオアトリート」
「え、ええ!?レオンさんから?ちょっとまって私お菓子持って無いんですけど!あ、じゃあ今もらったガムを…」
「それはナシだろう」
「えー、じゃあどーしろと!?」
「そうだな」

クスクス笑いながら、なまえの頭に手を乗せ、耳に口を寄せて「お菓子の代わりになまえをもらおうか」と囁き、素早く顎を持ち上げ、軽く唇にキスをする。
顔を離せば、みるみるうちになまえは顔はゆでダコのように真っ赤にし、俯いてしまった。
しまった、イタズラがすぎたかと思い謝ろうとした瞬間、ガッとなまえに頭を掴まれる。

「なっ!?」

ゆるり、と俯いていたなまえの顔が上がった。
目が、鋭い。

「よー、兄ちゃん。元気か」
「な、お、お前……」
「あー覚えててくれたー?せやでーみんなのアイドル空時さんや」
「な、なんで、お前が…」
「なんで、やと?」

ぎり、っと指に力がこもる。

「ついさっきのこと、思い出してみ?あ?お前、なまえちゃんに何してん、あ?」
「いや、それは…そのー」
「せやなーそうやなそうやんなー!ああ、今日はハロウィンかぁ、なら俺からもトリックオアトリートや。ただしお前に選択権は無しでジャスト トリックや。覚悟はできとるか?」

にこっとなまえ、いや、空時が微笑む。嫌な汗が背中をつたった。

「いや、ほんと、すまなか……」



お菓子とイタズラと神様と
(はっ!?何か私、あれ?)
(ああ、なまえか……)
(え、レオンさん、なんでそんなボロボロ…!?)
(いや、何でもない……)