速水先生が、泣いた。



消灯時間もとっくに過ぎて、真っ暗な病室。すーすーと同じ病室の人たちの寝息が聞こえる。

しかし、私は何だかなかなか寝付けなくて、ベッドの上でゴロゴロと寝返りをうっていた。
すると、シャッというカーテンの開く音がした。ふとその方を振り向く。
そこにいた人を見て、眠気なんて微塵も無かった意識が、更に覚醒した。


「速水先生…?」

何でこんな所に?どうして?
遠慮なく私のベッドに上がってくる速水先生。聞きたい事が一瞬でブワッと沸き上がってきたけど、それを訊ねるより前に、速水先生の腕が伸びてきて、私をぎゅうっと抱き締めた。いや、しがみつく、と言う方が正しいかもしれない。

なっ、と声が喉から出かかる。
が、大きな声を出すわけにはいかないので、必死で飲み込んだ。
そして出来るだけ、小さな声で先生に質問する。


「先生…?どうしたんですか?」
「あぁ……」
「先生?」
「あぁ…」


「いや、あぁじゃないでしょう?」
そう言おうとしたとき、先生の腕にまたギュッと力が入った。
速水先生が私の肩に顔をうめる。


「先生……?」
「っ………」
「………先生、泣いてるんですか?」
「………泣いてない」


泣いてない。泣いてなんかない。
ボソリボソリと今にも消えそうな声で呟く。
私は、何だかとっても胸が痛くて。
言い表せない感情が胸の中で渦を巻いて、ただひたすら先生の背中を擦りながら、「そうですか」と言う。

それでも、何かを堪えるように、堪えて、自分の中にそれ閉じ込めようとしているように、身体を小さくして私にしがみつく先生を見て、私の胸がパチンと弾けた。


「先生、」

お願いです。一人で泣かないでください。潰れてしまわないでください。傷つかないでください。
花房さんは、先生は誰にも心を開かないって、言ってたけど、私、先生の中に土足で踏み込んでるのかもしれないけど、だけど、一人で泣かないでください。

息もつがずに早口で言い切る。
先生に嫌われるかもしれない、と
だけど、先生は何も言わずに涙を流した。
涙はきらきらと光って落ちて、私の服に染みを作る。
それは、先生の言いたいこと全部なんじゃないかとなと私は思った。

きれいなみず



「って言う本でも書いて夏コミで売ってやろうかと思うんですがどうでしょう白鳥さん」
「うーん、何か速水が闇を抱えた主人公みたいで気にくわないなぁ…。そうだ、僕を主役にして、速水は脇役で良いんじゃない?」
「え、白鳥さんが主役?」
「僕の方がイケメンだし、色気もあるしそっちのほうが良いんじゃない?」
「えー、でもやっぱり速水先生の方が似合うと思うんですよ、中2病っぽいし…」
「お前ら、脳外科にぶちこまれたいみたいだな」
「ぎゃ!は、はは速水先生…!」
「あーら速水先生、聞いてたの?盗み聞きなんて陰険な速水先生にはぴったりだよねー」
「お前に言われたくないな」
「あ、あの、私お腹イタイノデチョットオイトマシマスネ!エヘヘ、アトハゴユックリー」
「なまえ、なら俺が見てやる」
「えっ…いや…その…いやああああああああああああ!!!!!!!」
「南無阿弥陀仏〜っと、僕ちゃんかーえろ!」
「う、裏切りモノォォォォォオオオオオおおぉぉぉ!!!!」


夏コミは出場中止のようです






凱旋の6話を見てから速水先生を泣かせたくてムラムラしてたんですが、やっぱりシリアスなんてそんなカッコイイものは書けませんでした。お粗末\(^p^)/