「んー…、わひゃっ!」
「しー、あんまり声出すとグッチーに気づかれちゃうよー」
「いや、白鳥さんが…んあっ!?」
「なにやってるんですか!?」
「わあっ!?」
「ほーらねー?」


にやにやと白鳥さんが笑う。
テレビの画面には、「you are die」と血のような文字が出ていた。
グッチー事田口先生はもーと言ってテレビの電源を落とす。

「あー!セーブしてないのに!」
「あんな成績セーブしても惨めなだけでしょ」
「う、うるさいですよ!」
「もー、安静にしとかなきゃいけないんですからね!白鳥さんも何やってるんですか!」
「いや、この子が暇そうにしてたもんでね、ちょっと暇潰しに」

ねぇ、と白鳥さんが聞いてきたので、うんと返事をした。すると、田口先生は「でも安静にしてなきゃ」と言って私を自分の病室に帰るように言った。

仕方がないからしぶしぶ隣に立て掛けていた松葉杖を取って立ち上がる。

「今日は帰りますけど、暇だったらまたきますからねー」
「もー、次は僕から行きますよ」
「じゃあ待ってますからねー田口先生さようならー白鳥さんもさようならー」

バイバイと手を降ってからひょこひょこと松葉杖をついて愚痴外来を出ていった。


* * *


ひょこひょこと松葉杖をついて去って行く背中を見て白鳥は口を開いた。

「グッチー、あの子なんて名前なの?」
「え、知らないで遊んでたんですか?」
「そーなのよ、僕の名前しか教えてなかったのよ」
「みょうじなまえさんです。先日足を骨折して、しばらく入院してる子ですよ」
「そう、明日二人で遊びに行こうか」
「えぇ?」

白鳥さんもですか?と笑う田口の言葉なんて聞かずに、「なまえか…」と呟いて白鳥はクスリと笑った。
その顔はまるでお気に入りのおもちゃを見つけた子供のような顔だった。