報酬につられて軽率にSランク任務を受けてしまったことを後悔した。遂行はしたが疲労が半端ない。…疲れた、早く帰ってなまえの癒しが欲しい。報告書も書かなきゃだ、ああ面倒くさい。
ふよふよと帰宅しコーヒーでも飲もうと寄った談話室、扉を開けると見慣れた切り裂き王子とこれまた見慣れた愛しい彼女。
「しし、マーモンおかえり。」
ちょっと待って、なんで。
「…なんでなまえがベルに寄りかかってるわけ。」
「殺気漏れてんだけど。つかこいつが王子枕にして寝てるだけだから俺悪くねーし。」
ソファに二人並んで座ってるのにイラッときたのに追い打ちをかけるような光景。座ったベルの肩に頭を寄り添わせすやすやと寝息を立てているなまえ。…俺は悪くないと言いつつも押しのけたり嫌そうな顔をしないあたりベルも嫌な気はしないのか。ムカつく。
恋人である僕が帰ったのにも気付かずあほ面して寝ているなまえに近寄って頬をつっつく。
「…起きなよ、なまえ。」
「…ふお、や、ベルやめて…」
「…。」
「…いや今の俺悪くないっしょ、完全に。」
「笑ってるのがむかついたんだよ。…僕だよ、なまえ。寝るなら部屋で寝なって。」
つっついても起きないなまえはあろうことか僕とベルを間違えた。少し強めに彼女の頬を引っ張るとうっすらと双眸が開かれて、眠たげな声が小さく漏れる。
「んあ、…まもちゃん?」
「正解。…ほら、早くベルから離れて。」
目が完全に覚めた彼女をベルから引き離す。ベルはというと傍観しながらによによと笑っていた。…絶対からかってる顔だ、ムカつく。
「…あ、ベルごめん! 私ってばいつの間にか寝てて」
「ベルに謝んなくていいよ。…部屋行こう。早く。」
「ええ?! でも、…あああ、待ってマモちゃん、引っ張らなくても歩けるよ!」
談話室を出ようと彼女の手を引っ張り自室へ向かう。出る前にベルが「俺に謝んなくていーとかなに? マーモンくそ生意気ー」とか言ってたけど知らない。
「ま、マモちゃん…? もしかしてなにか怒ってる? 怒ってるなら私謝るよ、ごめんねマモちゃ」
「なんでもないよ。それより、今日は一緒に寝ようね。君に拒否権なんてないからね。」
「や、やっぱり怒ってるよね?!」
…やきもち焼いたとか絶対に言ってあげないからね。今日は疲れた僕のためにずっと隣にいてもらうから。