かちかちと無機質な秒針の音が響く。時刻は今12:30になろうとしている。どうせ今日は非番だし久々に遅く寝ててもいいや、と思っていた。
...つまりは、なんだ、寝過ぎてしまった。枕元の携帯を見ると通知が一件来ていてそれはなまえからのだった。
『可愛い可愛いマモちゃん。今日も私朝からお仕事なの! 寂しくなったらいつでも電話していいからね! 愛してまーす(はーと)』
ぱたり、と携帯を閉じる。確かに朝っぱらからうるさいなまえの声が聞こえなくて少し寂しいが不思議と電話しようとは思わなかった。
...、仕事中だったらなまえに悪いからね。ちょっとした気遣いだよ。まだ少し眠気の残る身体を起こし大きく欠伸をひとつつき、ベッドから出た。
談話室にてコーヒーを飲みながら読書をしているとルッスーリアが僕を呼んだ。
「マーモンちゃん! ちょっとこれ見て!」
ルッスーリアはどこか楽しげに手にしていた雑誌を広げそのページ一面に写っている女を指差した。
「...ム、僕はそんな雑誌興味な...!!!」
雑誌の女の顔を確認すると帽子の奥の目を見開かせる。それは見覚えのある顔で、毎日見ている顔で。
「...なまえ、じゃないか」
「そうなのよ! 偶然見つけちゃってね、こういう雑誌に出てるんだったら言ってくれれば良かったのに〜」
ルッスーリアが何かぶつぶつと言っているのを聞き流し雑誌の中のなまえを見つめる。
短めのスカートから伸びるすらりとした綺麗な足、細い腕、くりんと丸い瞳、所々メッシュを入れていてカラフルだが彼女らしい髪の毛...。
元々顔が整っているなまえは写真だとより美しく見えた。....可愛い。
しかも雑誌のなまえは三角座りをしている。こんな短いスカートじゃ見えてしまうのでは.....。
「隊服じゃないなまえちゃんもなかなか可愛いわよね〜、…ってマーモンちゃん?! 鼻血出てるわよ?!」
「...っあ」
何かが滴ってるなとは思ってたけどまさか鼻血だったとは。慌ててティッシュで鼻を抑える。ああ、変なの。朝起きた(正確には昼だが)時はメールで十分だったがこういうのを見てしまうと途端に会いたくなってしまう。
僕もなまえのところいけばよかったかな...?
ばんっ。
「マモちゃんただいまーっ」
玄関を乱暴に開けてやっと会えたぁあ!なんて両手を広げ喜んでいるなまえを見て、心のどこかが「きゅん」と鳴った。
のは、気のせい。