「えへへへー、フラーン!」
「なんですかー、センパイ。」
「可愛いフラン! よしよーし!」
「なまえセンパイ、擽ったいですー。」
「ぎゅーってして! 私もするから! えへ。」
「なまえセンパイ。」
「フランはあったかいねー! 可愛いしあったかいし可愛い!!」
「センパイってば。」
「可愛いよフランー!」
「…なまえセンパイ。」
「…無理しなくていいんですよー、泣きたかったら泣いていいんですー。寂しいなら寂しいって言っていいんですよー。ミーでいいなら聞きますからー。」
そういうと彼女は大きな双眸を潤ませて、いつもみたいな馬鹿面の笑顔を引き攣らせて、ミーを見つめていた。
ぐす、と鼻を啜る音。ゆっくり一度頷き俯いてしまった彼女のミーを抱きしめる腕が少し震える。ああ、この人は相手がどれだけ身勝手で酷くても愛していたんだ。この人に愛されていたそいつがひどく羨ましくて、ひどく憎たらしかった。
辛いなら辛いと言えばいいのに。寂しいなら寂しいと言えばいいのに。元々彼女は自分の感情を抑え込みがちだった。傍から見て分かるほどに(ミーがよく見てただけかもしれませんが。)彼女は傷つき、隠し、それに気づかないあの阿呆は相変わらず遊んでいた。
そして、あの阿呆は愛してくれるなまえセンパイを捨てた。与えてないのはお前だというのに、与えないくせに縛るだけ縛って彼女を苦しめたというのに、「お互い辛くなったから」なんてふざけた理由で。
「っ、ありがと、ごめ、んなさ」
「謝らないでくださいー、…ほら、泣いてていいですよー。」
ふわりと彼女の髪を撫でた。ここのところなまえセンパイは泣きっぱなしだ。別れて数日経っても涙するくらい愛してたのか。嗚呼、どこまでもあの阿呆が羨ましい。
ミーはセンパイの悩みをずっと聞いてきましたから分かりますよ、辛く思う気持ちも何も。
「(だからセンパイ、ミーじゃダメですか。)」
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