▼ 君を探す
調べに調べるとどんどんわかる。なまえちゃんの好きなブランド、好きな食べ物、よく買うもの、くせ、下着のこと...。知れば知るほど愛しさが増すよ、なまえちゃん可愛いなぁ。
そういえばこの前勇気を出して隣に座ってみたんだよ。なまえちゃんさ、僕のこと見て「あ、久しぶり!」って言ってくれたよね。可愛かったなぁ、笑顔が眩しくて。
最近ね、もう一つ勇気を出したことがあるんだ。君の家のインターホンを鳴らしてみたんだよ。いつもは君が家に入るのを見て帰るんだけどついに我慢出来なくなって押しちゃったんだ。一回出てきてくれたよね、すごい不安そうな顔して辺り見回してさ...。ああ、僕のこと意識してくれてるんだって嬉しくなっちゃったよ。
そういえば今日も眠そうだったね、そんなに悩んでくれたのかな?
「そっか、僕がノートとっとくから10分くらい寝てなよ。ここ結構はじっこだしバレないさ」
優しく笑いかければ安心したような顔をして「ありがとう」って言うからなまえちゃん本当好き。
もういやだ。やだやだやだ。手紙が増えた、インターホンなる回数も頻度も増えた、わたしの好きなブランドの服とかを送ってきた、隠し撮りの写真を送られた。ストーカー行為を受けてもう2ヶ月経つ。こういうのに全く耐性の無いわたしは参るのが早い。当たり前だ、素直に気味が悪いもの。
もう手紙はビリビリに破いて捨てた。見たくもないし、できれば触りたくもなかった。服だって使わずに袋に入れっぱなし。というか、なんでわたしがよく行く洋服屋知ってるの。
「なまえ、最近疲れてるの?」
「...ちょっとね、いろいろあって」
「やつれてるよ?...あんまり無理しないで」
友達の気遣う声に「ありがとう」と笑ってみせる。そう、いつか止む。無視すればいつか止まるんだ。
そう信じてわたしは家を出た。