ミーくんとミーくん

 
玄関の鍵を開けると短い足を必死にパタパタと動かして走ってくる音。扉を開けると私を待っていたのかキラキラの目でしっぽをブンブン振ってピョンピョン跳ねる愛犬の姿が。

「ミーくんただいま。お出迎えしてくれたの?」

そう聞くと、ワン!と一回だけ吠える。ほんとにうちの子は可愛い。可愛くて仕方がない。
私が靴を脱いでリビングへと歩いていくと、嬉しそうに足元で飛び跳ねている。早く遊びたいのか、お腹が空いたのか。それはリビングに着いてから聞くとしよう。そう思ってリビングの扉を開けると、今日は珍しく先に帰宅していた同居人がソファで足を組んでテレビを見ている。

「あ、ミヒャエル。帰ってたんだ。」
「あぁ、そいつと一緒で俺も待ちくたびれぞ。」

彼はこちらに目線だけ向けてそう告げる。ミーくんはと言うと、そんなミヒャエルの膝の上に飛び乗って、そこから目からキラキラビームを放っている。

「ミヒャエルはミーくんにご飯あげた?」
「まだ。ちなみに、俺もまだ。」
「じゃあミーくんのご飯からね。」

持っていた仕事用の鞄を降ろして、ミーくんのご飯やおやつが入った籠の方へと歩いていく。私の行動で自分のご飯が出てくると分かったミーくんはミヒャエルの太腿を思い切り蹴ると私の方へとダッシュで向かってくる。帰ってきた時と同じようにぴょんぴょん飛び跳ねるミーくんと一緒にご飯のお皿の前まで行くと、しっぽで飛んでいけちゃうんじゃないかってくらいのスピードで振り続けていた。

「ミーくん、お座り!」

そう言うとキラキラビームを出したままカーペットの上にちょこんと座るミーくん。

「ミーくん、お手!」

左手をミーくんの前に差し出す。すると、ミーくんの手よりも大きな手が私の掌の上に乗って、その上にミーくんの手が乗っている。一瞬理解が遅れたけど、その手の正体は一人しかいない。

「私はミヒャエルをミーくんって呼んだことありませんけど?」
「ミヒャエルだからミーくんだろ。」
「もー!ミーくんのご飯なんだから邪魔しないで!」

ミーくんごめんね…と思ってそっちを見るけど、バクバクとご飯を食べ始めていた。お腹空いてたよね、ごめん…。

「おい、こっちのミーくんも腹減ったぞ。早く寄越せ。」
「へいへい…。こっちのミーくんは可愛くないな…」




ご飯を食べ終わったあと、ミーくんに新しい芸として『ちんちん』を覚えさせようとして

「ミーくん、ちんちん!」

って言った。そしたらミヒャエルが

「随分と積極的だな。」

とか言ってズボンを脱ぎ出したから流石に殴った。サッカーボール頭にでも食らったのかゴールポストに頭打ち付けたんですかこの人。






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