完結
 夜空に線を引いて星が流れていく。願いをかけることはできそうにないけれど、足を止めてただ夜空を眺める。
 不思議な気持ちだった。今までにない、あの初めて流れ星を見た時とも違う気持ちだった。興奮しているようで、案外落ち着いている。でも確かに嬉しくて、首が痛いと思うのに空から目が離せない。私は、きっとこうやって沢山の星が見ることができるのを、ずっとずっと待っていたんだ。

   ○

 今日、流星群が見れるらしい。
 テレビでも何度か報道されていたし朝嬉しそうに水谷が話していた。星に興味があるわけではないのだけれど、何故かここ最近そういう話題が耳に入るようになった。今まで気にしていなかっただけなのだろうか。そういう話になる度にちらりとあの子の顔を思い出す。
 部活帰りにコンビニに寄って、アイスを買った。コンビニから出ると星が綺麗に流れていた。

   ○

 こんな日は、きっとまた彼に会える気がした。
 学校で会えたのに、私は欲深くそんなことを考えている。こんなに星が輝いているのだから、きっと私のこの願いを叶えてくれる星があったって不思議じゃない。願ってばかりじゃ駄目だとは思うけれど、こんなに綺麗な夜空を見上げているとそんな気分になるのだ。

   ○

 こんな日は、きっとまた彼女に会えるような気がした。
 彼女はこの星空の下、どんなに目を輝かせているだろうか。名前も知らないあの子の瞳をまた見たいとそう思ってしまうのだ。

 もしも、彼女に会えたら名前を聞いてみよう。
 この星たちがきっと後押ししてくれるはずだ。
 星や月に興味がなくとも、彼女と俺を繋げているのは紛れもない君たちなんだよ。だからねぇ、ちょっとの勇気をくれないかな。
 柄にもないことを考えてしまうけれど、何故かいつもより身体が軽いように思えた。部活が終わったあとなのに、なんだか楽しくてついつい笑ってしまいそうになる。



「こ、こんばんは」
 奇跡なんて言葉は、本当は使いたくない言葉だった。自分の人生に使う時なんて、ないと思っていた。それでもどうだろうか、こういう時は使っても安っぽくは思えないんじゃないか。いや、今日使わなくていつ使うんだ。

「こんばんは、また会ったね」

 まさか本当に会えるとは思ってもいなかった。私服姿の彼女が俺と同じようにコンビニの袋を持って立っていたのだ。

 星が流れた。綺麗な線を引いて、視界に入った。それを見て今しかないと思った。

「ねぇ、君の名前を教えて」

 恥ずかしそうに笑った目の前にいるこの女の子を、知らないうちに好きになっていたのだとその時初めて気付いたのだった。

20140209
20160929 再修正

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