完結
 今日は、流星群が見れるらしい。

 朝、そんな話を聞いてから私は何度も時計や窓を確認してしまっている。それでも外は綺麗な青空で、まだまだ星なんか見れるわけがない。わかっているのに、確認してしまう。気になってしまう。

「ねぇ、今日流星群が見れるんだって。なんの流星群だったか忘れたけど。名字、見れたらいいね」
 朝、水谷くんと挨拶を交わした後そう言われた。そうだねと言えば忘れないそうにしなきゃねと嬉しそうに水谷くんは言った。


 初めて流れ星を見たのは確か21時頃だった。
 普段より遅い帰りだったのを覚えている。部活帰りに友達と軽い食事をして、一人で帰ったあの帰り道。私は初めて流れ星を見た。

 今日も、21時頃流星群が見れるらしい。見れるだろうか、見れたらいいな。今までに何度もそういうニュースを聞いた。しかし天気が悪かったり寝ている時間だったりで流星群は見たことがなかった。
 それでも今回は、見れるかもしれない。この前流れ星が見れたのだ。流星群も見れるはずだ。きっと見れる。そういう運がきっとついているはずだ。私はそう思って窓の外を見る。あんなに長く感じた授業はもう終わり、空も少し色を変えていた。
 水谷くんが頑張って見ようねと手を振って部活へ行く。

 掃除を終え、部室に行く。廊下を歩いていると、後ろから肩を軽くたたかれる。

「ねぇ」

 その声は私の友人のものではなかった。少し高い男の子の声。あれ、と思うともう心臓はどくどくとうるさく動きだす。私はこの声を知っている。これほどまでに心臓を動かし、頬に熱を持つような声を私は今までに何度か聞いている。

「急にごめん。君の名前知らなかったから」
 ゆっくりと、視線を向ける。あぁ、彼だ。
「でも、君を見つけたら言いたくなったんだ」
 これから部活なのだろうか。前にも見かけた友人と思しき男の子がちらっと私と、目の前の彼を見て笑って歩いていった。

「今日、流星群が見れるみたいだよ。見れたらいいね。きっと、綺麗だろうね」

 この時、それまで以上に私は流星群が見たいと思った。早くその時間にならないかなと思うのと同時に、彼とこんな近くにいる今この瞬間で時が止まればいいと思った。単純で矛盾するこの気持ちに改めて彼に恋をしているのだと自覚させられる。

「あなたも、見れたらいいね」

 彼は笑ってそうだねと優しい声でそう言った。

20140124
20160929 再修正

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