12

「……でさ、こんなこと言うのもあれなんだけど…でもやっぱ、はっきりさせておきたいか
ら、言うんだけど…」
「何?」
ロイは安堵のため息をついて、エドワードを抱きしめたまま続きを聞いた。しかし、まさか
この成り行きでそんな言葉がでるとは思っていなかった。驚いた。
「ロイさんは、俺をどうこうしたいとか思う?」
「………というと」
「いま、ベッドの上だし」
エドワードも所在なさげにうろうろと視線をさまよわせて、頬を真っ赤にしてうつむいた。
泣いてしまったのもあってか、なにやら恥ずかしいようだ。
「やっぱ…俺こういう性癖?体質?…だから…その、男の人に欲情するわけで…」
エドワードがふい、とロイの手を逃れて、彼に背を向けた。
「で、でもロイさんが俺の身体にはなんも感じねーっていうなら、そのな!分かってるから!
大丈夫だから、そう言ってくれていいからな!俺適当にするから…その…だから、うわー」
エドワードはもう無理、と枕に顔をうずめた。
「無理だったら、今そう言って…?」
そういってちらりとそのまだ涙でうるんだ瞳を向けられて、ロイはうぐ、と喉に真綿を詰め
られたような苦しみに襲われた。
「……分からない」
ロイは正直にそう答えた。エドワードはその答えに、起き上りながら尋ねる。
「なんで?」
「……白状するが、生まれてこのかた女性も男性も抱いたことがないからな…」
ロイが小さな声でそう、ぼそぼそと言った。
「………つまり、童貞って、こと…?」
「…」
声もなく、ロイは頷いた。
「「…………」」
あまりの恥ずかしさに耐えられなくなったロイが先に叫んだ。
「あーっそうだよ!未経験ですー!女性とつきあったことなんかないんだからあたり前だろ
う!」
「いや別に、責めてるわけじゃねえし俺も童貞だし!」
エドワードは今にも泣き出しそうなロイを慰めながら、そうだよね、この人の性格からいく
とソープとかセフレとか知らなさそうだし、潔癖なところもあったんだろうな、と思った。
本当にロイは無菌状態で育てられたのだろう。そういうこともきちんと教えてあげたら良かっ
ただろうに、とも思うが、いいや、これから俺が少しでも教えてあげられたらいい、とエド
ワードは思い直した。ロイを優しく抱きしめてやりながら呟く。
「…じゃあさ、脱童貞、してみる?」
「……は…?」
「俺と」
その言葉に、ロイの頬が一気に赤く染まった。口をぱくぱくとさせながら言葉を探す彼の表
情に、エドワードは嬉しくなってその首にだきついた。
「ロイさんのはじめて、俺にちょーだい?」
ロイが戸惑っているのも分かって、エドワードは笑いながら彼をベッドに押し倒した。その
上に馬なりになりながら、彼の手をとる。
「――っ」
「ここにね、ロイさんのをいれるんだよ」
エドワードがロイを見下ろしながらそう言った。なるほど、とロイは息をのんだ。男同士で
する方法など彼の知識にはもちろんなかったが、意外とすんなり理解できた。繋がりたい、
という思いも、そのとき既に芽生えていたに違いない。
「嫌なら…触りっこだけでもいいし」
エドワードは彼の手をはなしてやり、その胸にまた頭を預けた。ロイは自然に、解放された
手をエドワードの背中に回した。
「…痛くないのか」
「最初は痛いけど…大丈夫だよ。気持ちよくなれるようになってるから」
「?…そうか」
エドワードも気持ちいいなら、とロイは意を決した。
「…その、はじめてでうまくいかないかもしれないが、…いいか…?」
そう囁いてきたロイに、エドワードは何も言わずに頷いた。
「大丈夫、俺がリードすっから」
「はは、頼むよ」
情けない、と思いながら、ロイはエドワードに任せることにする。経験者がいるのが心強かっ
た。
エドワードがなんでもないことのように、シャツに手をかけてするりと脱いで、ベッドの下
に放り投げた。
「わっちょっ!」
ロイが思わず自分の目を両手で塞いだ。なにやってんだよ、ちゃんと見て、というエドワー
ドに無理だ見れない!とロイはぶんぶん頭を振りながら拒む。
「男同士だろ?なに恥ずかしがってんの」
「き、君の肌だと思うと…もうだめだ!」
無理だあああ、とベッドの上で暴れるロイのシャツに、エドワードは手をいれながら言った。
「もっと恥ずかしいことするんだから、慣れないと」
「うわっ」
腕が自然に上にあがって、シャツを脱がされた。それもベッドの下に落とし、エドワードは
へえ、とうっとりとロイの肌に手を這わせた。
「意外と鍛えてるんだ。運動部だった、とか?」
「いや、この前アンチエイジングの特集をやってたから、ちょっと腹筋をはじめてみたとい
うか…」
「まだ十分若いって」
「君に言われても嬉しくないね」
ロイも慣れてきたのか小さく笑う。そんな彼を見ながら、エドワードはその少し厚い生地の
上から、ロイのものを撫で上げた。
「…っ!」
ロイの頬がさらに赤くなって、茹でたみたいだな、とエドワードはその頬にキスを落としな
がら思った。
「え、え、え、エドワード…っその、やっぱりこういうことは…ちゃんと付き合ってしばら
く期間をおいてからのほうがいいと思うのだが…っ」
「何を今更…ちょっとおっきくなってるじゃん」
「でも…っん」
慌てているロイの唇に、エドワードは自分のそれを押しつけた。あのとき、本当にキスしちゃ
えばよかった、と思いながら、固く閉じているロイの唇をノックする。それに気付いて、うっ
すらと開けられた口腔に侵入した。彼の唇の中で舌を絡ませて気を逸らしながら、ゆっくり
とズボンの中に掌を忍ばせた。
「んっ………えど…っ」
焦ってとめようとする手をやんわりと遠ざけて、エドワードは下着の中に手をいれた。ロイ
がびく、と身体を震わせる。
「…あ、…」
ロイは恥ずかしそうに目を伏せて、エドワードの手を受け入れた。その唇から、何かに耐え
るようなはあ、という吐息が漏れるたびに、エドワードは体中に歓喜が湧きあがるのを感じ
た。
「…気持ちいい?…ロイさん」
ロイはただ、ゆっくりと頷いた。エドワードはその頬に手を這わせ、もう一度やわらかなキ
スを落とした。
「ロイさん…」
「ロイでいい…エドワード」
ロイの掌が、エドワードの頬を包み込んだ。そして、引き寄せてまた二人で、キスを交わす。
じわりじわりと染み出すものが、何なのか、もう二人とも分かっている。
「……十分だね」
最後につん、とロイのものをからかうようにはじくと、エドワードは身を起こした。
「えっと…ちょっとほぐすから、あっちむいてて」
さすがにこればかりはエドワードは恥ずかしいのか、ごそごそとローションの代わりになり
そうなものをさがしながら言った。
「あの、私も君に…さっさ、さ…さ、触りたい、のだが」
ロイが起き上りながら言った。エドワードは顔を赤くしたが、してくれる?と首をかしげた。
「…あの、ほんとにうまくないかも…」
「いいよ。ちょっと乱暴にされるのも慣れてる」
「…優しくするよ」
ロイはエドワードからクリームの入れ物をうけとった。エドワードはロイに向かって、少し
だけ足を開いてみせた。思わず喉が鳴る。ゆっくりとエドワードを横たわらせ、そのズボン
と下着に手をかけ、引きずりおろした。
エドワードはもぞもぞと足を動かして、ロイの手を煩わせらないように自分からズボンを脱
いだ。そして邪魔になるものは全部ベッドの下に落とされた。


[ 18/26 ]

[*prev] [next#]
[top]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -