2

「って、エロ本と大して変わんないじゃん」
いわゆる、官能小説という部類の本らしかった。俺も大人になったって少尉たちも認めたわ
けね。アルと部屋別にしといて良かった、とエドワードはそう考えながら、表紙をじろじろ
と眺めた。好奇心にかられて、ぺら、と一枚捲ってみる。
登場人物を見てみると、主人公はマイケル、他はジャスティンやトーマスなどたくさんいて、
説明も読むのも馬鹿らしいのだが。
「…女が、いねぇ…」
誰かが男名の女なのか、と思いつつ読み進めていくと、まさしく男しかでてこない。しかも、
なんだかマイケルとジャスティンの仲が如何わしい。どきどきしながらさらにページを進め
る。
数十分読み進めたとき、エドワードの口から呻くような声が漏れた。
「…なんだこれ…っなにやっちゃってんだよ…っ」
キスは分かる。自分もロイとキスくらいしたいと思っていたところだ。唇にするのが大人の
キスだってことも知っている。だが、舌を絡ませるとはどういうことだ。まじでこんな恥ず
かしいことすんの、と顔を赤くしながら、ついつい本を閉じられず文字を追った。
キスをしながらお互いの服をゆっくりと脱がし、まずズボンの上から触る。触るって、やっ
ぱあそこだよな。男同士でもこういうことしちゃうんだ、と思いながらベッドの上に倒れ込
み、また一枚ページをめくった。
ジャスティンを床に押し倒し、足にひっかかったままの下着とスラックスを引きぬく。エド
ワードは思わず、それを自分に置き換えていた。ロイに押し倒されて衣服を乱され、ほんの
少したちあがった竿をもって、ロイがそこに顔を。
「ぎゃああーっ!あああーっ!」
ついにエドワードが本を放り出した。なんてことだ!なんてことを想像させるんだ!なにこ
んなもん渡してんだあのくそ少尉!とばたばたと暴れる。
「…こんなの嘘だ…っ」
もう嫌だ、とベッドにうずくまるが、その先の内容が気になって仕方ない。エドワードはゆっ
くりと起き上り、投げ出した本を拾い、ぺらぺらとめくる。続きを発見して、ごくっと唾を
飲んで読み始めた。
『…あ。っだめだよっ…ああぁ…』
『だめってなにが?きちんと反応してるのに』
行為は続く。一度本の中の登場人物が達すると、エドワードもびくん、と肩を震わせてしまっ
た。な、何を考えてるんだ。俺はただ、大佐とのときのための参考に読んでるだけで、と自
分に言い聞かせてみるもの、身体が少し熱くなっていた。も、恥ずかしい、と思いつつ、好
奇心には逆らえない。
『さあ、いれるよ』
『やっだめぇ…』
「い、いれるって…どこに、なにを…っ」
ついエドワードは、自分の後ろに手を回して、第二の穴があるかどうか確認してしまう。も
ちろん、そんなものはない。だとしたら、下半身で男のものが入りそうな場所なんて、一つ
しかありえないのだ。
「…まじ、かよ」
『一緒になろう』
『…あ、…ぅん…』
ずぐずぐずぐ、と体内に侵入してくる巨大なもの。とても無理だ。死ぬ。エドワードはでき
ない、と首を振った。確かに何をされてもいいとは思ったが、こんなことは規格外である。
ただ自分が無知であっただけだ。知らないくせに、いや、知らないからこそ大きな口を叩け
ただけだったのだ。
『あうっあああ、いたっ…痛い…っ』
『ごめんね、少し我慢して…』
『痛いよ…痛い…っ』
そりゃ痛いだろう。むしろ痛いだけだろう。こんなところにそんなものいれるなんて馬鹿じゃ
ないのか。エドワードははあ、とため息をついた。だが次の行には、とんでもないものが待
ち受けていた。
『…うあっあっ嘘っ…ああぁんっ』
『ここかな』
『はあっき、気持ちいい…っ』
「嘘つけ…なんで」
『奥っ奥のいいところにっ…あたるぅっ』
『はあっいっぱい気持ちよくなって…!』
「…嘘、だろ…」
男のそこの奥深くには、そんな場所があるのか、と何度も説明を読んだ。原理は理解できた
が、そんな、まさか、そんな都合よくいくものなのか?とエドワードには疑問が残った。こ
ればっかりは、やってみなければわからない。
『もうっイくっイクっ』
『一緒にイこうっ!』
行くってどこにだよ。と思いながら最後のページをめくると、受けて側が悲鳴をあげ、攻め
側も呻いていた。二人はその後しばらくキスを交わしながら抱き合っていた。


抱かれる、とはこういう意味だったのだ。



[ 2/26 ]

[*prev] [next#]
[top]



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -