英雄の橋


崩れ落ちた再不斬の体にはあちこちに刀が刺さっていたり、カカシから受けた傷で出血していた。それは見て明らかだが、今すぐに治療しないと死んでしまう出血量だった。その姿に思わず目を背けてしまいそうになる、第七班。

「…目を背けるな。必死に生きた男の最期だ。」
そう、目を背けてはいけない。カカシが今言ってるようにこれが”必死に生きた男の最期”なのだから。カカシの今の言葉で第七班は目を再不斬に向けた。一件落着、そう見えた。だが。

「オイオイオイ…お前ら安心しすぎ!!」
「!」
「!!」
「っち」
「え!?」
「雑魚が…」
「やっぱそうだよねー…」
悪党の言葉に、カカシ、ナルト、サクラは驚きまたははっとし、サスケ、九喇嘛、セツナは呆れている。

「クソ忍者どもめ…せっかくの金づるを殺してくれちゃって……!!」
「お前らもう死んだよ!!」
「こーなったらオレら的には町を襲って金目のものぜ〜〜〜んぶ頂いていくしかねーっつーの!!」
「そうそう!!」
「Let's Begin!!」
そう言い私たちに襲ってくる忍びたち。ていうかここ英語通じるんだ?今度使ってみようかな。と、しばらく暗部離れてるし感を取り戻すかな。
地面を蹴って先陣を切った男の目の前に行き、そこでクナイを取り出して頸動脈まであと1cmあるかないかのところで止めた。クナイを首元に当てられている男も後ろの男たちも自分たちの立場、というかこの空気が伝わったはずだ。動けば殺す。その意味を込めてクナイを強く握りしめた。ああ、懐かしい。この空気、この緊張感。私の顔はどうなっているだろうか。いつも面で隠しているものだから、分からない。この場面で私は、どうしていただろう。ただ、これだけは言える。私は暗殺、相手の戦意喪失をするときは何も思っていなかった。思っていたとしてもどうでもいいこと。任務には全く関係ないことだった。ということは。

「な、なんだやんのか…」
「聞いてんのかおめぇ!!!!!!」
「餓鬼のくせに、冷めた表情しやがってぇぇぇええ!!」
口元が笑っているか、無。敵の反応からして無か。あの頃と変わっていない、良かった。そう思った瞬間私の横に弓が地面に突き刺さった。どうやら、着いたみたいだ。

「それ以上この島に近づく輩は…島の全町民の全勢力をもって!!生かしちゃおけねェッ!!」
そう弓を構えるイナリ、町民たちはこの島に来た時のどこか諦めた表情などはなかった。その姿に感動したのか、タズナは涙している。

「イナリ!!」
ナルトが嬉しそうに名前を呼ぶとイナリは同じく嬉しそうに笑ってこう言った。
「へへっ。ヒーローてのは遅れて登場するもんだからね!!」
この勢いは良い。その雰囲気を感じたのだろう。ナルトは影分身の術を、ナルトの横に立つ九喇嘛はグルル…と低い声で威嚇を、サクラはクナイを構え、サスケは写輪眼を発動、カカシも影分身をして敵を混乱に落とした。

「ヒィー――――――――――――!!」
「さーあ…やるか?」
カカシの声に驚いたのか、忍びたちは逃げようとする。と、最後の忠告しとかないと。私は先に逃げ出した忍のところへ瞬身の術で移動した。

「ねぇ」
「う、うわあああああああああ!???」
私はクナイを相手の首元にかざして言った。

「さっきも全町民が言ってたけど、この島にまた近づいて悪さしようもんなら。」
ゆっくりと淡々と言葉を発する。忍たちは殺気に怯えているのか私の無表情に気味悪がっているのか、どちらなのだろうか。私の言葉に、私を見ている、注目している。

「その時はどうなるか、分かる?」
いつものにっこり笑顔。効果は抜群のようだ。

「は、はいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」
「も、も、もちろんですとも!!!!」
「なら、良いんだけどね。」
すごい勢いで船に乗っていった。その様子に町民は喜んでいる。さーて、あとは…

再不斬に近づく足音、その主は。
「……終わったみたいだな、カカシ…」
「ああ…」
「カカシ…頼みがある」
「……何だ」
「……あいつの……顔が…見てェんだ……」
「……ああ…」
カカシが再不斬を担いで白のところへと歩いた時。雪が降り始めた。

「………雪だ」
「こんな時期に雪…?」


―――白よ…泣いているのか…

「悪いな、カカシ」

――ずっと側にいたんだ…せめて最後もお前の側で…



「…できるなら…お前と…同じところに…行きてェなぁ……オレも…」

―――――お前はオレの行くところにいるのか…白……オレは悪人だ…けどお前は………殺し方も人柄も…優しい子だった…本当に………すまなかった…白……

再不斬の目から涙がこぼれた。それと同時に白に添えてあった手が力なく地面に落ちた。
偶然か否か。白の目に雪が落ちた。まるで涙のようだった。


「…こいつ…雪の降る村で生まれたんだ……」
ナルトが震えた声でそう言った。目には少し涙が溜まっていた。

「そうか…雪のように真っ白な少年だったな……」
―――行けるさ、再不斬…二人一緒に…


”なあにセツナちゃん、久々に話しかけてくれたと思ったら。そおいうこと?”

”うるさい、どうなのよ。”

”ひどぉい…そうね。再不斬は地獄決定かしらね?白も地獄行きだけど、罰は再不斬より軽いかしら?二人とも似たりよったりだもの。地獄にも色々あるから、会おうと思えばあるんじゃないの?まだ魂はこちらにも閻魔様のところにも来てないから。”

”そう…ありがとう”

”いいえー。あ、久々に会ったから一つ。貴方と同じ転生者が大蛇丸の元にいる。中忍試験で会うことになる。転生者はその世界で何をしてもいい、だけど。運命には逆らってはいけない。貴方がこの世界に来た時に、貴方は両親が助かり、平和に暮らすことを望んでいた。正直私はやろうと思えば、できたわ。だけど原作とそれは大きく運命を塗り替えてしまう。少しならいいのよ、だけど人が生き残るとか結末を大きく変えてはいけない。それは天界でもその世界でも禁じられているの。”

”そういうこと。大蛇丸の元へとは厄介ね…それも近いうちとは”

”いい?その子が大蛇丸のところにいるのはいいんだけど、もし木ノ葉崩しを本当に成功させてしまうようなら…それはダメなのよ。運命を良くて悪くて変えてはいけないの。その子が本当に成功しようものなら、天界の者は黙ってないわ。私の指示でその子の存在そのものを消すか、その子を殺すしかないの”

”てことはもし、私が自来也さんやアズマさん、イタチを助けたり、サスケを連れ戻したら…”

”ええ…そうなる。存在そのものはその世界の者誰一人として貴方のことを知らないということよ。出来事も何もかもね。で、話は変わるけど転生者同士は殺し合っても何もないの。ひどい言い方だけどね。だから貴方しかいないの。その子を止めるのは。”

”…分かったわ、それなりに警戒をしておくわ。元々大蛇丸は警戒をするつもりだったし。”

”もちろん、私もサポートをするわ。天界のトップがこんなこと言ってるんだから、セツナちゃんは幸せよん名前とか書類あさってみる。”

”あんたトップだったの…。ていうか名前覚えてないのね?”

”私は興味ある子しか覚えない主義なの!!天界でも貴方はそれなりに人気の見物だしね。ていうか私直々に転生させたのも貴方が初めてなのよ?いつも部下か秘書にさせてるもの。”

”…テレビみたいな言い方ね…まあ、いいけどね。興味を持っていただいて光栄よ…と言えばいいの?”

”うふ、照れるぅ。また何かあったら話しかけるわ。こちらからも様子は見てるけど、セツナちゃんもよろしくねぇ。”

”うん、それじゃ。”


…随分久しぶりに話したけど、話の内容はどれも覚えておかなければいけないものばかりだ。
早々にくたばるわけにはいかなくなったわね。




2週間後

白と再不斬の墓を作った。もうそろそろ波の国を出るので最後のお墓参りだ。


「…ねぇカカシ先生……」
「ん―――?」
「…忍者のあり方ってやっぱこの二人が言った通りなのかなぁ…」
「忍ってのは自分の存在理由を求めちゃあいけない……ただ国の道具として存在することが大切……それは木ノ葉でも同じだよ…」
「本物の忍者になるって本当にそういうことなのかなぁ…オレってばそれは嫌だ…」
「アンタもそう思うのか?」
「んー…いやな、だから忍者って奴は皆知らず知らずそのことに悩んで生きてんのさ…あの子のようにな…」

白とは少しだけ話しただけだったけど、あの子は優しすぎた。優しすぎる故に忍には向いていなかったのかもしれない。あの子が血継限界の子でなければ人生は変わっていただろう。再不斬にも白にも。


「忍者も人間なんだよ。確かに国の道具と思い日々過ごしている者もいるだろうけどね。でも皆はそれが嫌と思うんでしょ?」
ナルト、サクラはこくりと頷きサスケはただこちらに目を向けている。

「なら、少なくとも皆は人間でありその人たちとは違う忍のあり方なんだよ。それはいつ見つかるかは分からないけど、それに気づけたとき。もう皆は本物の忍なんだよ。」
少し演説臭くなってしまった。もう分かったんだよ、ううん。分かってた。女神に言われたやっぱり思い知った。私はやはりこの世界の人たちとは違う。同じ人間で同じ忍で仲間で家族であっても。私には助けたいと思っていた原作の人を助けることができない。見て見ぬふりしかできない。それでも、私は

「よし、今決めたってばよ!!オレはオレの忍道を行ってやる!!」
背中を押して、支えることならできるはず。



「おかげで橋は無事完成したが…超さみしくなるのォ…」
「お世話になりました」
「まあ、タズナのおっちゃん。また遊びに来るってばよ!」
「ぜったい…か…」
イナリが半泣きである。まあ、そりゃそっか。この二週間一緒に修行したり、話したり、遊んだりしてたもんね。おっ、地味にサスケも来てますね。

「サスケ兄ちゃんもだぞ!!」
「…おう」
嬉しそうに照れております。サクラ、照れ顔萌えるとか言ってニヤニヤすんな。

「セツナちゃん、サクラちゃん。家のこと色々手伝ってくれてありがとう。また遊びに来て。」
ツナミさんも少しさみしそうにしている。

「いいえ、こちらこそありがとうございました。またツナミさんのご飯食べに行きます。」
「そうよ!!今度は私は家事もーーーっとうまくなって、それにちゃんと忍になって来るね!!」
「ふふ、楽しみにしているわ。」

「じゃあな…」
ナルトが笑ってそう言い歩くとやはり半泣きである。
イナリにいたっては大泣きだ。

「男ってのはごじょっぱりよね…」
「そうかもね」
サクラと少し呆れながらその光景を見ていた。

「あの少年がイナリの心を変え…イナリが町民の心を変えた…あの少年は”勇気”という名の”希望への架け橋をわしらにくれたんじゃ!」


架け橋か…
…橋って言やぁこの橋にも名前をつけらんとな

そうか…
なら一つこの橋に超ピッタリの名前があるんじゃが

おお!どんなだ?

ナルト大橋ってのは…どうだ?

ふふ…いい名前ね

「帰ったら一楽行ってイルカ先生と話すかなぁ…」
「じゃ、私は!サスケ君里へ帰ったらデートしない?」
「いや、断る」
「そ、そんなぁ…」
「家帰ったら掃除してお布団干してスーパーのタイムセールに行かないと(あと修行も、暗部の仕事もしないと)
「セツナ主婦じゃない…あ!買い物ならあたしも一緒に行きたいな!!!」
「いいよ。けど、野菜とか肉とかだよ?」
「い、い、の!!!」
「…オレも家掃除して買い出ししないとな…」
「お、一緒に行く?」
「……」
「おいサスケェ!!!!何迷ってんだよ!!!!姉ちゃんに手ェ出すなよコノヤロー――!!!」
「サスケ君が行くなら絶っ対行く!!!!!ていうかナルトぉ!あんたサスケ君になんてこと言ってんのよぉおお!!!!」
「(仲良くはなったなぁ。そして賑やかである。…セツナやナルトのことを三代目から聞かないとな)」


何だぁ…いいのか?そんな名前で…

ふふ…この名はな…この橋が決して崩れることのない…

そしていつか世界中に響き渡る超有名な橋になるよう…
そう願いを込めてな…


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