大切な人とは


さーてと、ここからどうするかねぇ…一応氷遁使えないよ?と脅迫してみてはいいものの、前言撤回。正直効果は期待できないかな。まず白が氷遁使うたびにいちいち電流流して火遁の技やってたら両方バテる。ま、つまりはさ。氷遁使う前に攻撃しろってことだね。てことで

「スピード勝負ってことかな?」
私はぼそっと呟いた後、勢いよく地面を蹴り瞬身の術で白のもとへと飛んで項を手で払おうとする。しかし、私の手は爪が項に触れるか触れないかというところで白によって掴まれてしまう。

「それで僕の後ろをとったつもりですか?」
振り返り私を睨む白。力強いなー。でも今のうち。
白が私の手を掴んでいるうちに、その手にマーキングの術式を施した。そして白の手から服に小さいマーキングの術式が施されたのを確認すると、私は白の脛を思いっきり蹴り、空いてる手で螺旋丸を発動し白の鳩尾に入れた。流石に白も予想できなかったのか、私の手を離して飛んで行った。

「っ…」
思わず白に掴まれた手を見る。顔は整っていて女顔でも体は男だ。
力を入れたのだろう。掴まれていた部分が赤くなっていた。少し摩り、飛んで行った白を見る。
…気絶してくれていたらいいんだけどなぁ。
少し甘い考えを持ってしまうが、やはりそうはいかない。しかし、右足を庇いながらひょこひょこと歩き、お腹に手を当てているところを見るとダメージはくらったみたいだ。

「私これでも女だからさ?一応倍返しってことで」
倍返しじゃ済まない仕打ちだが、セツナは戦場では似合わないにっこり笑顔を向ける。

「…女性を怒らしたら怖いというのは本当ですね……。おかげでかなりダメージもらいましたよ。」
苦しそうな顔をして、セツナに近づこうとする白。しかし、その足取りは重い。

「…貴方、本当はいい人なんだね。敵じゃなかったら話し合いたかったなぁ。…けど、こちらも結構ダメージもらったよ」
掴まれた手を医療忍術で治していくが、少し時間がかかる。
私が治すのが早いか、白が私を倒すのが早いか…。
それとも片手で飛んで行くか…。
疲労しているからという理由で、相手の反射速度を下に見るか…。
さて、どうしようかなぁ。
と、迷っているところだった。
サスケが私の隣に来て、白の相手をオレに任せろという眼差しを向けてきた。
…じゃ、お言葉に甘えて私は引かせて頂こうかな。
頷こうと思った時、私の隣では一人の少年を助けに行ったはずのナルトと九喇痲がいた。

「遅くなってごめんってばよ!!」
「セツナ、お前はサクラとタズナを護衛しとけ。まだ少し時間かかるだろ」
「…いいとこで来てんじゃねぇよ、ナルト」
ったく、うちの男子たちはここぞっていうところに来るなぁ。
かっこいいと言えばいいのか、良いとこどりと言えばいいのか…

「うん、分かった」
セツナはそう言うと医療忍術で治しながら、サクラとタズナさんの元へと走って行った。

「さーてと、行くってばよ!!サスケェ、九喇嘛ァ!!!」
「フェアじゃねーが、下忍二人+狐だからな」
「っけ、お前らワクワクしてんじゃねーよ。餓鬼かテメェら。あぁ、餓鬼か」
「るっせーってばよ!!/るせーよ!!」
あぁ、やっぱてめぇら餓鬼だ。と九喇嘛は心の中で呟くのだった。



んー。そろそろ治ってきたかなー?
手を治しつつ、サクラとタズナさんの元へと向かうセツナ。
てか、カカシ先生と再不斬どーなったんだろ…
少し気になりつつタズナさんとサクラが見えてきたときだった。
サクラがタズナさんの前に立ちクナイを握りしめ、その見ている先には今にも切りかかろうとしている再不斬だった。思わず体が動いた。瞬身の術でサクラの前に立ち右手で螺旋丸を発動し、再不斬にめがけて当てる。しかし、当たったのは再不斬の首切り包丁だった。
ッチ、これに当たっても意味がない…!血液中の鉄分で刀は修復するはず。
セツナは右手をそのまま再不斬の左手の包帯に当て、マーキングの術式を施す。そしてそのまま再不斬の右肩に右手を置き、力を込めて肩の関節を外す。
右手から嫌な音が出た感じがするので、きっと外れたはずだ。
再不斬は顔を少し顰めて、首切り包丁を左手で持つ。右手はだるーんとしていた。そしてよく見てみると体のあちこちから血が出ている。
…どうやらカカシ先生に随分やられたみたいだね。
後ろからカカシ先生が再不斬に向かって右手にバチバチと電光を浴びている。
これは雷切…!
私はすぐに再不斬から少し距離を取り、後ろにいるサクラとタズナさんの前に立つ。そしてカカシ先生が右手を再不斬の心臓に向けた時だった。

ずぼっ

血が飛び散るが、それは再不斬のものではない。
ナルトとサスケ、九喇嘛と戦っているはずの白だった。




――――――少し前
「サスケ、九喇痲、行くぞ!!」
ナルトはそう言い、九喇嘛と共に白の元へと走っていく。
白は周りを少しちらっと見て、走って行った。

「あーーーーーー!?どこ行く気だこの野郎!?」
「落ち着け、ナルト!!!あの方向再不斬とカカシが戦っている方向だぞ!」
「!確かにカカシ先生と再不斬のチャクラが感じるってばよ…!」
「どっちにしろ追うしかないが…誘導されてる可能性もある。気をつけろよ」
「おうよ!!」
「…(ナルトのやつサスケと仲良くなってから、落ち着きのない素がどんどん出てきたな…。まあそんだけ心許してるってのはいいことだが……。)」
九喇嘛は呆れながらもサスケとナルトのやり取りを見て二人の後ろをついて行く。

「…この辺でいいでしょうか」
この辺なら橋も近い。風通しもいい。氷遁を使うのはもってこいだ。そして何より再不斬さんと距離がそこそこ取れている。万が一の場合も大丈夫。
白はそう判断すると止まり、振り返ってサスケたちを待つ。もちろん、氷遁の用意をして。
そしてこちらは怪我がある身。状況はこちらがどうみても不利だ。ならば、先手必勝。殺すつもりのない相手に不意打ちとはあまり気が乗らないが、仕方がない。僕は再不斬さんの道具だ。道具は所持者を守らなければ意味がない。相手が再不斬さんを殺そうとしているのならば、それは道具が守る番だ。

「秘術 魔鏡氷晶!!」
ナルトたちが白に近づいてきたところで白は術を発動する。いきなり発動されたために、ナルトたちはそれを交わす術もなくまんまと引っかかる。

「っ!しまった!(セツナが氷遁を使わせないように脅していたが…無意味になってしまったな)」
「氷遁って血継限界か…!」
「これはめんどい術だな…」

「…(目の当たりにいくつかの氷でできた鏡…どれも頑丈っぽいってばよ)」
ナルトが冷静に術を解析していると、白はその鏡に飛び込んだ。そしていくつもの鏡に白の姿が映る。

「じゃあそろそろ行きますよ。僕の本当のスピードをお見せしましょう」
白がそう言い千本を構えたかと思った瞬間、鏡に映っている白が千本を一斉に投げ出した。そして服に切れ目が入ったかと思うと、体のあちらこちらに傷ができている。

「尾獣玉!!」
キリがないと思った九喇嘛は小さな尾獣玉を一か所に放射した。すると一か所の鏡は割れた。

「おい、サスケ…!」
そこでナルトはサスケに話しかけようとした。するとサスケの目には写輪眼が開眼されていた。

「ナルト、行くぞ」
白の動きが見えているのだろう。あそこだと目が方向を指していた。ナルトはおう!と頷き、術の用意をした。

「火遁 豪火球の術」
「風遁 連風波《れんぷうは》」
サスケの豪火球とナルトの連風波がシンクロした。まるで波のように風が勢いよく連続でナルトの手のひらから出り、サスケの豪火球とぶつかり炎を帯びた風は白へと素早く突き刺さるように移動する。白が移動する暇がないような速さで。

「!!(ここでコンビネーション技ですか…)」
白は驚きながらも回避しようと試みた。そして次の鏡へと移動をしようとした瞬間、九喇嘛が待っていたかのようにナルトとサスケのコンビネーション技を回避しながらものすごいスピードで走り始めた。そして、白が移動した鏡に向かい雄たけびを上げた。空気がびりびりと痺れ、一番近くにいた白は思わず動きを止めてしまう。

「! しまった!!(本当の狙いはこれか…!」
耳を思わずふさぎ込んでしまった白。そして気づいた時には白にサスケとナルトのコンビネーション技は、白に見事に当たり白は鏡から吹き飛んだ。

「っ…」
服にあちこちに切れ目ができ、肌が見えているところからは赤くなっているのがわかる。

「悪ィけど手加減はなしだってばよ!!お互い様だし、何より嫁入り前の姉ちゃんの体傷つけたんだからな!!この野郎!!」
「…知ってたのか、このシスコン野郎」
「左手をあんなに摩るなんてそれしか考えられないってばよ!!あと、シスコンは認めるってばよ!」
「まあ、お前のシスコンは今に始まったわけじゃねぇからな。(あとセツナも結構ブラコンだしな。)」
「…セツナさんは貴方のお姉さんだったのですか。申し訳ないとは思いますが、倍返しを食らったので勘弁してほしいです。」
「…!(だからこいつこんなに、右足と溝内を庇ってたのか…)」
「サスケ君とナルト君…と言いましたか。君たちにとって大切な存在はいますか?」
「いるってばよ、姉ちゃんと九喇嘛とサスケとカカシ先生、あと友達!(と、会ったこともない両親だってばよ」
「…第七班」
「あるのですね。もしよければ、覚えていてください。人は大切な何かを守りたいと思った時本当に強くなれるものなんです。」

それを聞いて九喇嘛はナルトとセツナの両親、そしてセツナを思い浮かべる。クシナとミナトはまだ生まれて間もないナルトとセツナをワシから守った。セツナはナルトが里のやつらに理不尽な暴力を受けて、肋骨が折れたとき暗部に入ると決意した。ナルトもセツナは自分自身の身を守るために共に忍術を学んできた。しかし、自分自身よりセツナを守りたいという思いのほうが強かった。

「お願いがあります。僕を殺してください」
「!?」
「はぁ!?何でだよ!?」
「再不斬さんにとって弱い忍は必要ない…君たちは僕の存在理由を奪ってしまった」
「…お前にとって大切な人は再不斬か?」
サスケは思うところがあるのか、そう問う。それにナルトも便乗をする。

「そうだってばよ!悪人から金もらって悪いことしてる眉なしの奴だけなのか?お前の大切な人って!」
「…………ずっと昔にも…大切な人がいました…僕の…両親です」

そして白は自分は霧の国の雪深い小さな村に生まれ、両親に恵まれたこと。しかし、母が血継限界だと知ると父は母を殺したのだ。霧の国では絶え間ない内戦を経験した。そんな国で血継限界を持つ人間は忌み嫌われて来た。その特異な能力のためその血族は様々な争いに利用されたあげく、国に災厄と戦禍をもたらす汚れた血族だと恐れられてきたのだ。戦後、その血族達は自分の血のことを隠して暮らしてきた。その秘密が知られれば必ず”死”が待っていたからである。おまけに父は白を殺そうとした。その時、白は父を殺してしまった。

「そしてその時僕は自分のことをこう思った…いや…そう思わざるを得なかった。そしてそれが一番辛いことだと知った。」
一呼吸置く白に九喇嘛、サスケ、ナルトは黙って話を聞いていた。

「自分がこの世にまるで…必要されない存在だということです」
「!!(オレと…同じだってばよ…でもオレには姉ちゃんが…九喇嘛がいた…)」
「再不斬さんは僕が血継限界だと知って拾ってくれた。誰もが嫌ったこの血を…好んで必要としてくれた…嬉しかった!!」
泣きながら話す白を見て、ナルトは思う。

こいつは悪人なんかじゃねぇ。オレと同じだ。ただオレと違うのは周りに姉ちゃんと九喇嘛がいたこと。あいつには誰もいなくなり、拾ってくれたのが再不斬という悪人だったということだってばよ。例えどんな悪人でも自分を必要としてくれたのなら、その人のためになりたいと思うはずだ。もし、オレに姉ちゃんもいなくて九喇嘛とも打ち明けられていなかったら…オレも、そんな風になっていてもおかしくない。でも…

「お前が闘うこと以外で再不斬に認めさせりゃよかったはずだろ…」
「…君は僕と似ている。似ている君ならわかるはずです。……君たちの手を汚させることになってすいません。…でもそれしか方法はないんです。」

「…いいんだな?」
サスケは写輪眼の発動をやめ、クナイを持つ。

「はい!!君たちは…夢をつかみ取って下さい…」
「…お前とは他の所で会ってたら友達になれたかもな」
そう言い、ナルトもクナイを持つ。そして二人は目を合わせ頷くと走り出した。

「ありがとう」
君たちは強くなる

そしてサスケとナルトが白の首にクナイを刺そうとした瞬間だった。白は何かを感じ、サスケとナルトの手を掴んだ。

「ごめんなさいナルト君、サスケ君!!」
ナルトは手を離し、どういうことかと聞こうと思ったが白はナルトの手を掴んでいた手ですでに印を結んでいた。
「僕はまだ死ねません!!」
すると白は消えた。

「…ナルト、サスケ、取り合えずセツナのところに行くぞ!!」
九喇嘛が走り出したのを二人は追った。

そしてたどり着いた三人が見たものは、カカシが白の心臓を貫き、白は再不斬を守るように立っていたところだった。

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