信じてなかったのは私の方。


英雄
才知、武勇、胆力に優れ、普通の人にはできない大事業を成し遂げる人。ヒーロー。

”英雄”ナルトが証明しようとし、イナリを始めとする波の国の人たちが居る訳ないと感じるもの。あれから数日たった。ついにサスケとナルトは木登りの修行を自分の納得いくところまでいき、タズナさんを護衛する日が始まった。今回の任務で少しだけ7班の絆は深まったように感じる。皆もそう思っているようだった。

…私だけじゃないみたい。とセツナは自分の仲間と呼ぶ存在、サクラ、ナルト、サスケ、カカシを見て思った。ここ数日、修行で何か芽生えたのかサスケとナルトはよく話している。楽しげに、はたから見れば仲の良い友人。私もサクラとよく話すようになった。主に料理や裁縫のことなどで。たまにサクラが「サスケ君かっこいいーーーー!」と突然言いだしサスケの魅力を永遠と聞かされる時もあるが、笑って聞くようにもなった。…正直友達とこんなによく話すのは、いのとヒナタだけだった。そういえばあの二人と仲良くなったきっかけは、私がヒナタが女の子にいじめられているところを発見して、そのいじめっこを口喧嘩で言い負かして去って行ったところをいのに見られ、よく話すようになった。…結構きっかけは些細な物なんだなぁ…。っと!思い出を振り返るのはここまでにしてちゃんとタズナさんの護衛をしないと!って言ってもタズナさん相変わらず橋を建ててるけど。昨日一人橋づくりから退いた人もいた。人数が少なってきている中タズナさんは橋を建てている。どうみてももう少しで完成だろうけど。
…って、さっきから気になってるけども何か…今日霧が濃くなってきている…。波の国は霧が多い。けど時間が進むにつれ霧もだんだん濃くなるなんてことは一度もなかった。どうみても自然の現象とはかけ離れている…それに今日の気温からして霧はそんなに濃くならないはずなのに。とすると、やはり再不斬の霧隠れの術とかかな?集中をよく研ぎ澄ませていつでも戦闘の準備をしておこう。皆に言うべきかもしれないけど、敵に感ずかれたりしたらやっかいだから言わないでおこう…と、言ってもカカシ先生も気づいているみたい、さっきからイチャイチャバイオレンスを読んでいるけど読むスピードが少し遅い。ナルトもサスケと一緒に橋づくりのお手伝いをしているけども時々霧の濃度をチェックしている。

そう思っていると、一気に霧が濃くなった。目の前が真っ白で何も見えないくらいに。急いで感知してみると再不斬ともう一人…自称追い忍の子がいる。ここは上司であるカカシ先生の指示を待つべきなんだろうけど…状況が状況…周りが見えない。私とナルト、カカシ先生は感知できるけどサスケとサクラは訳が分からずにおろおろしているに違いない。とりあえず霧を消さないと…!

「風遁 舞風」
私は素早く印を組み、両手を親指と人差し指で三角形を作るように重ねると両手から、勢いよく多量の風が広範囲にひゅうと吹き、全体に風が行き届いて霧が薄くなる。この術は殺傷能力は低い。ていうか、この術は霧や砂ぼこりをはらったりする、いわゆる目くらましの術に対応するもの。広範囲に多量の優しい風が勢いよく吹いて、数秒で辺りが見えるように作った。皮肉にも、再不斬。アンタと交戦した後に作ったんだよ。霧がなくなったので辺りを見渡してみる。すると、ナルトの横には九喇嘛が狐サイズと戦闘モードの大きさになっていた。※疾風伝の赤丸サイズ
どうやらナルトは九喇嘛を口寄せしていたみたい…サクラはタズナさんの近くにいてクナイを持っていた。サスケもクナイを持ち辺りをきょろきょろと見渡し、カカシ先生は再不斬を探していた。
「姉ちゃん!!」
「何?どうしたの?」
ナルトは九喇嘛と一緒に私の所に来ると、話し出した
「イナリやツナミさん、どうするってばよ!?」
敵がツナミさんやイナリを人質として、襲ってたりしてたらダメだもんね…。
「ツナミさん家に飛雷神のマーキングを施してきた。私が行って確かめt「それは無理だな」…!」
話を言い終わる前に、再不斬の攻撃によって話は中断された。急いでガードしたけど…痛いなこの野郎。
「お前の相手はオレだ。写輪眼のカカシでも構わないが…お前が緋蛾と知った以上、オレの、オレの屈辱を晴らしてやるっ!!!」
再不斬が大声で言ったために、近くにいたナルト、そしてセツナのことを緋蛾と知らなかったカカシやサクラ、サスケ、タズナにその事実は知れ渡った。
「なっ!(セツナが…あの緋蛾だと…?信じられんが、アイツの強さを肯定するには一番しっくりきている…!)
「え…?(セツナが…セツナがあの?え、嘘…)」
「…!?(セツナが緋蛾!?緋蛾てあの暗部のか!?)」
「何じゃと!?(緋蛾ってーと…あの緋蛾か!?)」
っくっそ!あの包帯野郎、ばらしやがった!!!!まあ、7班にはそろそろ言うつもりだったからいいけど…こんな形でばれてしまうのは嫌だな…もうごまかせっこないしね、とくにカカシ先生は納得しちゃってるし。
「…そう……ナルト、悪いけどツナミさんとイナリの様子見てきてくれない?私、どうにも行けなさそうだからさ」
「…分かったってばよ。できるだけ早く戻ってくる」
ナルトは私のお願いを聞いてくれると、すぐに飛雷神の術でツナミさんの家に飛んだ。改めて再不斬に向き合ってみる。すると、再不斬の横にはあの追い忍の少年がいた。
「…もしかして、2対1なの?」
私は足につけている手裏剣ホルダーから、飛雷神のクナイを取り出した。…1対1ならともかく…2対1でも戦おうとすればいけるけど…さすがに再不斬と、再不斬の気に入ってる少年相手じゃ不利なんだよね。これはちょっと手が抜けませんな。
「悪いな、再不斬。お前はセツナに用があるみたいだが、オレはお前に用がある。二度も部下にお前を相手にさせることはさせない。」
カカシ先生は写輪眼が隠れている、左目にかぶっている布をずらし私の前に立ちふさがった
「セツナ、お前はあの面の子の相手を頼む。サスケと一緒にだ。サクラはタズナさんを守れ」
「くくっ…いいだろう、カカシ!!!まず、お前を片づけてから緋蛾をぶっ殺す!!!」
二人はそう言うと、殺気を出し合い戦闘を開始しようとしていた。…これはカカシ先生のご好意に甘えて私は面の子の相手をしますかな。私はとりあえず、九喇嘛を連れてカカシ先生と再不斬の元から離れてサスケとサクラ、タズナさんの元へと駆け寄った。

「タズナさん、ケガないですか?」
「あ…ああ、何ともない」
「なら、よかったです。私はカカシ先生の指示通り面の子の相手をします。サスケ、どうするの?私が嫌ならサクラとタズナさんを守って」
私が緋蛾と知って、私のことを殺人鬼、気持ち悪い、騙された、など思っていたら連携は取りにくい。第一怖いと思われてたら、しばらくは私はこの7班から避けられるだろう。まあ、別にいいけど寂しいもんはあるね。
「どうするも何も、戦うに決まってるだろ。あの時はオレは震えてて何もできなかったが…今回は大丈夫だ。行くぞ、セツナ」
…これは驚いた。サスケは何事もなかったかのように私と接した。何事もと言うよりは、受け入れてくれたに等しいかもしれない。少し驚いている私にサクラは私の目をしっかりと見て言った。
「ねえ、セツナ。アンタまさかあたしたちが緋蛾と知って避けるとか、変な風に思ったとか予想してたんじゃないわよね?そんなことする訳ないでしょっ!!!これでもあたしは、セツナを、7班を信用してるんだからね!この国に来てから皆そう思うようになったんじゃないのっ!?」
サスケはサクラのその言葉を聞いてしっかりと頷いていた。…そうか、結局私は皆を信用してなかったんだ。信用してたら皆がそう思うはずないと断言できるものが心のどこかにあったはずだ。私はそれを持っていなかった。
「…そう…ありがとう。この戦いが終わったら話したいことがあるんだ。だから…ごめんね、その時は話を聞いて欲しい」
サクラは「当たり前じゃないっ!」と強く頷いて、サスケも「ああ」と頷いてくれた。…ああ、そうか。私は最低な人間だったんだ。今は嫌いとか皆を見下していたんだ。私は強いからって皆を見下していたんだ。できる訳がないのに、始めたスピードが違うのに。私はただ、うちはオビトの計画を阻止できたらよかった。ナルトがちゃんとつらい思いをせずに、生きてくれたら、火影になってくれたらそれでよかった。それ以外はどうでもよかった。私自身も。だって私はこの世界にはいないはずの人間なんだから。でも、少しずつ変わり始めてきている。どうでもよくなんかない、でも今まで通りうちはオビトの計画は阻止してみせるし、ナルトが火影になるまで見守る。それにやっぱり私はこの世界にいないはずの人間だということは忘れてはならない。私は皆と違う。女神に名前を付けられ、才能を貰ってこの世界に生かされている。私はその才能を使って敵を倒す、皆を守る、目的を果たす。

「ワシはこの小娘と一緒にタズナを守る」
「ありがとう九喇嘛」
「さて、僕の相手は黒髪君と赤髪さんですか?」
「そうだよ。それとも…私とサスケじゃ相手にならない?」
私は仮面の子ににっこりとほほ笑んだ。
「いえ、十分ですよ…よろしくお願いしますね。サスケ君とセツナさん…でしたか?」
「カカシが言ったオレ達の名前を覚えやがったな」
「すいません、僕の名前は|白《はく》と言います。」
「よろしくね」
私はそう言うと、ただちに表情筋を強張らせた。いわゆる無表情。戦闘の時にはどうしてもなってしまう。…じゃあ、鳴らそう。戦いの音を。

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