たまの休日  [ 24/25 ]


『ん・・・』

誰かが階段を上ってくる。足音が若干煩い。

「星那ちゃーん!朝だよ!!起きて!」
『・・・・・・・・』

煩い・・・
私は無言で布団に潜り込んだ。

「ちょっと!いくら休みの日だからって寝過ぎだよ!?」
『寝過ぎって・・・まだ7時じゃん』
「もう7時なの!ほら、旦那たちなんか鍛練終えてご飯食べてるよ?」
『えー・・・でも私、今日は用事ない・・・し・・・』

あ・・・

「どうしたの?」

私は飛び起きて財布の中を覗いた。

『これ、今日までだ・・・』

うまい堂のケーキバイキングのクーボン券。1組2名。それが2枚ある。

『お母さん・・・私今日昼から皆と出掛けてくるね』
「そっか、久しぶりだね。旦那たち喜ぶよ」
『まぁ、慶次は来れるかわからないけどね。もしかしたら用事あるかもしれないし』

えーと・・・前田、前田・・・

あれ?ない・・・

おかしいな?フルネームで登録したと思ったんだけど・・・


あった。


私は風来坊の電話番号を呼び出した。

「もしもし?」
『あ、慶次?』
「・・・慶次じゃないよ、俺は夢吉」

なん・・・だと!?

『あのさー、慶次今日暇?』
「暇だけど、デートのお誘いかい?」
『あはー、残念でしたー。デートじゃないけど、久しぶりに四人で出掛けようよ』
「わかった。いいよ!」
『ありがと!じゃあ迎えに行くから待ってて』
「うん」
『じゃあ後でね』











こうして入学してから初めての休日に久しぶりに四人で遊ぶことが決まったことは記憶に新しい。

まだ半日も経っていない。

がしかし私は何故ここまで疲れているのだろうか?

「♪♭&♀♂%●※□$☆」
『うん、お願いだから幸村日本語しゃべってくれる?』

どうしてこうなった?
ケーキバイキング自体は良かったんだ。その選択は間違っていない。

うまい堂に着いた瞬間、目を輝かせた幸村を見たんだ。
私は間違っていないぞ!

が、そこからが問題だった。
幸村の食べっぷりがおぞましい。
政宗や慶次は幸村から目をそらしてコーヒーを飲んでいる。

『全く、宮地くんもビックリだよ』

独り言のように小さく呟いたつもりだったのだが、政宗にも慶次にも聞こえていたようだ。

『何?』
「いや、珍しいなと思ってさ・・・」
「あぁ、星那の口から俺ら以外の名前が出たのは初めてじゃねぇか?」
『そう、かな?』

自覚はないんだけどな・・・

「む?片倉か?」
『え?宮地くん?』

噂をすればなんとやら。

『宮地くんもまだ来てなかったんだね。誰と来たの?』
「夜久と青空と犬飼だ」
『・・・不思議だと思ったけどそこまで不思議じゃなかった』

犬飼くんは確か弓道部で神話科だ。

『でも良かった。あの人たちがいなくて』
「東月と七海か・・・」
『うん・・・』

私と話ながらもチラチラと幸村のほうに視線が向いている。

『やっぱり気になるよね?ごめん・・・』
「いや、構わない・・・」
『私が構うんだよ・・・』

政宗と慶次はなんか怖いし・・・

「あ、星那ちゃーん!」
『つっきー待て!』
「へ!?」

つっきーこと月子は犬のように止まった。

「ダメですよ月子さん。いきなり近付いては、星那さんも驚いてしまうでしょう?」
「あ、颯斗くん。・・・そうだね、ごめんね星那ちゃん」

違うんだ!そうじゃないんだよつっきー!!

私は立ち上がり、宮地くんと共に幸村とつっきー達の間に立った。

「あ、星那ちゃんははじめましてだよね?こちら・・・」
『あー、知ってるよ!田中くんでしょ?』
「いや、違・・・」
『あれ、安藤くんだっけ?』
「違いますよ星那さん。彼は犬飼・・・」
『あ、犬飼はj「もう黙れよ!!」ごめんごめん』

なんか元親と同じ何かを感じたから

「・・・Hey girl、悪ぃが星那から離れてもらえるか」
『え?』
「星那殿、薬でござる」
『あ、ありがと』

あれ、幸村さっきまでケーキに夢中じゃなかった?

「ねぇ君、これを・・・」

慶次はつっきーに白い封筒を手渡した。

「何ですか?これ・・・」
「それさ、君の幼馴染みくんたちに渡してほしいんだ」
「錫也たちに?」
「うん、そう・・・」

あれ、今一瞬慶次から殺気が・・・
気のせいか・・・

「言っとくけど俺達、アンタの幼馴染みのこと許すつもりないから」

・・・・・・・・・

『気のせいじゃなかった』



  









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