昔の話
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「そういえば片倉にも女友達がいたのか?前はできたことないって聞いたような・・・」
『あぁ、よく覚えてたね。鶴ちゃんたちは昔の友達なんだ。現世ではまだ出会えてないから・・・』
「それって哀羽星那のときか?」
『ううん、前田のとき』
「ま、前田・・・?」
「星那、そやつは放っておけ。続きを解くがいい」
『そうだね、ちょっと無駄話をしようか』
「話を聞け」
ごめん、元就・・・
それは私が佐助たちに出会うずっと前の話。
「星那ちゃーん!早く早く!」
『待ってよ〜』
「星那、そんなに急ぐと転ぶぞ」
私がデビューしたのが中学生の時で、それまでずっと児童養護施設で育った。前田荘で・・・
「もう少し落ち着きなさいな。急がなくとも食事は逃げませんから」
「いいじゃないか!子供は元気が一番だ!」
荘長先生は利家で、女子寮の先生がまつ先生。後で分かったことなんだけど、二人の前世は幼馴染みの慶次の前世での家族だった。あ、前田家は今も家族一緒に転生したみたい。
「それにしても、あっという間でしたね。星那がここまで育つのも」
「あぁ、元気に育ってくれてよかった」
私は産まれてすぐ施設の前に置き去りにされたみたいで、名字も名前もなくて・・・星那って名前は利家がつけてくれたの。
「まつ先生、鶴ちゃんから聞いただが星那が里親に引き取られるって本当だか?」
「・・・!?どうしてそれを・・・星那にも今日話すというのに」
「あの子は・・・伊予の巫女・・・だから・・・」
いつきちゃんもお市ちゃんも鶴ちゃんも孫市姉さんも施設で出会った。
そして私が引き取られるまで一緒に暮らしてた。
「星那・・・忘れ物はありませんね?」
『うん!利家、まつ先生・・・今まで育ててくれてありがとうございました!』
「星那ちゃん、辛くなったらあらくれ者の海賊さんと宵闇の羽の方に助けを求めてくださいね?」
「前田慶次にもだ。烏でも星那の役には立つだろう」
「蒼いお侍さんもコキ使っていいべ!」
「・・・市たちのことも・・・忘れないで」
みんな笑顔で見送ってくれたのに、四人だけはずっと浮かない顔してた。
「ここが今日から君の部屋だよ」
『何・・・ここ・・・』
施設を出て連れて来られたところはなんでもあった。クローゼットなんか広いくらいだったし、冷蔵庫もお風呂もあって生活には困らなかった。
でも、窓がなかった。扉も外からしか開かない仕組みで、私が逃げ出せないようになってた。
『ここから私の哀羽星那としての生活が始まるの』
「伊予の巫女も・・・未来を知っていたのなら引き留めればよかったものを」
『よかったんだよ、これで・・・だってあのまま利家たちと一緒に暮らしてたら元就たちとは出会ってないもん。鶴ちゃんが私の未来を知っていたからこそ、お市ちゃんはあのタイミングでアンタたちを呼んだんでしょ』
「星那は我らと出会えたのが第五天の加護だと考えるのか・・・」
『そうとしか考えられないじゃない。ねぇ、おチビちゃ・・・ん?』
zzZ・・・
『あれ・・・』