片想い5題
4.携帯電話に閉じこめる(サエ→不二)
いつも伝えられない「好きだよ」の4文字。
幼い頃からずっと好きだった。
幼馴染の不二周助は佐伯の心を捕らえた。
転校が決まったとき、不二は寂しいと言って佐伯の腕の中で泣いた。
不二を抱きながら、伝えてしまおうかと考える自分がいた。
佐伯が一歩踏み出すのを迷うのは、不二を失うのが怖かったからだ。
もし受け入れてもらえなければ、幼馴染としてさえ見てもらえないかもしれない。
不二が笑いかけてくれることはもうないかもしれない。
それはどうしても嫌だった。
佐伯の気持ちは、中学生になった今でも変わっていない。
お互い忙しく手紙のやりとりの頻度は減った。
それでもメールで近況を報告し合っていたし、不二を遠く感じたことはなかった。
不二への想いも褪せない。
けれど、不二を失うのは嫌だから伝えることはしない。
言えない想いは、今日も携帯電話に閉じこめて。
next.要→悠
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