校内恋愛で5題



2.屋上を借り切って(菊不二)


「やっぱりここにいたんだ不二」
「あ、英二」

体調が悪いと言って不二は授業を抜け出した。
菊丸は廊下に出る不二を横目で見ていたが、保健室とは逆の方向へ歩いていくのが見えた。
向かう先は恐らく屋上だろう。
不二が授業を抜けるなんて珍しい、それも所謂サボりなんて。
何となく放っておけなくて、菊丸も屋上へ向かった。

「どしたの?」
「んー…まぁ、ちょっと、ね」

不二の答えは歯切れが悪い。
俯いて菊丸と目を合わせない。
こんなとき、不二は菊丸に何をしてほしいのか。
菊丸はそれを察した。
今までずっと親友として不二の隣にいたのだから、そのくらいはわかる。
現在の二人の関係は恋人同士という特別なものに変化しているのだから、なおさら。

菊丸は何も言わずに不二を抱き締めた。
不二の頬を伝う涙が菊丸の肩を濡らした。

大丈夫、どこにも行かないから。
誰もここに来ないから。
だから、いくらでも気が済むまで俺の腕の中で泣いて。



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