水色の傘



「あ」
「どしたの祐希」
「雨降ってる」
「あー…」



帰ろうと思って靴を履こうとしたとき、ふと外を見ると雨が降ってきていた。
昼過ぎから曇ってきてたけど、ギリギリ家に着くまで大丈夫かなって思ったのに。



「祐希傘あるの?」
「ん、ない」
「もー、持っていきなよって言ったのに」



そういえば今朝悠太にそんなことを言われた気がする。
でも、悠太今日日直で先行っちゃったし、遅刻ギリギリだったから家出る頃には忘れていた。
だいだい、朝は晴れてたのに何で今降ってくるの?
家帰ってからにしてよ。



「しょうがないな…はい」



そう言って悠太が差し出したのは水色の傘。
でもこれ悠太のだよね?



「これ誰の?」
「オレの」
「悠太濡れるじゃん」
「オレは折りたたみ使うから大丈夫。
祐希使いなよ、濡れるでしょ?」



悠太は靴箱から折りたたみ傘を出す。
「行こう?祐希」
「あ…うん」



傘を開いて歩き始める。
悠太が貸してくれた傘に雨が当たって音を立てた。
前を歩く悠太の背中を見ると、傘が少し窮屈そうだった。



「(こっちの傘使えばいいのに…)」



悠太はいつもそうだ。人のことばっかり。
今日だってオレに長い傘貸してくれたし。
別にオレじゃなく他の誰かだったとしても同じなんだろうけど。
優しすぎるんだよね、悠太は。
でも。



「…ありがと、悠太」



小さくお礼を言う。
雨の音はオレの声を掻き消して、悠太には届かなかったと思うけど。


今日だけは、悠太の優しさに甘えてもいいですか?





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悠太は靴箱に置き傘常備してそうなイメージが…欠席裁判では持ってなかったけど
祐希の今日だけなんて絶対あてにならないよなーと思いながら書きました(笑


2011.05.14


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