スロー



夕暮れの教室は、なんだかとても穏やかで。



「よっし、書き終わったぁ〜!」



そう言って菊丸は伸びをする。
学級日誌を書く菊丸と、書き終わるのを待っている不二と。
放課後の教室には二人だけ。



「日誌出してくる…って不二?…寝てる…」



日誌を提出してこようとした菊丸は、不二が寝ていることに気付いた。
夕陽を浴びながら、うたたね。
その顔が綺麗で。



「起きないとちゅーしちゃうよ?」
「……」
「…なんてね。

でも…誰もいないし、いいかなぁ…?」



そう言って顔を近づける。
いつもよりずっと近くに不二を感じる。



「…って、何してんだオレ」



唇が触れるか触れないか。
ギリギリのところまで近づいて、でも菊丸は触れなかった。



「さっ、日誌出してこよっかな!」



努めて明るく言う。
心臓の鼓動が不二に聞こえてしまいそうな気がしたから。



「…英二のバカ」



一人になった教室で、不二はゆっくりと身体を起こす。
鼓動が少し早い。



「心臓に悪いよ…」



小さく呟く。
心なしか、顔が朱い。
窓から入る風が妙に心地よかった。



放課後の時間は、ゆっくりゆっくり流れていく。





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36が好きです
なんていうか、等身大の二人が書きたい…


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