失くさないで
幼いあの夏の1ページ。
母さんの実家があるという日本にやってきた。
はじめての日本。見慣れない景色。
とりあえず、近くの公園に来た。
でも、日本語がわからなくて周りのみんなが何言ってるかがわからない。
話しかけても伝わらない。
みんな遠くでひそひそ言ってる。
一緒に遊びたいだけなんだけどな。
あ。
シーソーに一人で座ってる子がいる。
行ってみよう。
「一緒にやろーよ」
言ってみた。
でも伝わらない。
しょうがないからシーソーを叩いてみたら、一緒にやってくれた。
初めてだ、一緒に遊んでくれたの。
「 」
その子に何か言われたけど、よくわからない。
とにかく楽しくて、嬉しくて。
一緒に砂場で遊んだり木に登ったりした。
でも、もう今日はさよならの日だ。
あの子に言いに行かなきゃ。
そして渡すんだ。
いつもの公園に行く。
そこにはあの子の姿はなかった。
「(まだ来てないのかな…?)」
公園の入り口で待ってたら、やっと来た。
でもオレのこと見もしないで歩いて行っちゃった。何で?
「なんでムシするんだよー!」
「何してるの、もう行くわよ」
「うん、ちょっとまってー」
なんかいつもと違ったけど、もう行かなきゃ。
ポケットから取り出す。
あの子が欲しそうにしてたおもちゃ。
もうさよならだけど、一緒に遊べて楽しかったし、嬉しかった。
絶対忘れないから、君もこれ、失くさないでいて?
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本編のこの話が好きです、小さい二人がかわいくて
祐希との出会いは千鶴にとっても大きな意味があるものだったんじゃないかと
2011.10.16
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