小ネタたち

気まぐれに増えたり減ったり

▽1.祐悠
願いを叶えて、想いを伝えて。

「はい、祐悠」
「ん、ありがと」

冬の休日。
オレはいつものように悠太と本屋に出かけた。
その帰りに公園のベンチに座って、積もった雪を眺めた。
空からの光が反射して眩しい。

「あったかいね」
「うん」

悠太が買ってきたココアは冷たくなった指先をじんわりと温めた。
一口飲めば口の中に甘い味が広がった。

「……」

ちら、と隣にいる悠太を見る。
指に息を吹きかけて、ココアを啜る。
ただそれだけのことなのに、どうして悠太がすると寒そうだなぁ、温めてあげたいなぁと思うのだろう。
きっとそれは悠太だからだ。
悠太がトクベツだからだ。
好きだなぁ。ずっとこうしてたいなぁ。

「ゆうた、すき」
「知ってる」
「ずるい」
「なんで」
「オレばっかり好きみたい」
「そんなことないって」

そう言うと悠太は飲みかけのココアの缶をオレの唇に押しつけてきた。間接キス。

今は外だからこれで我慢して?

悠太の甘い囁きは、ゆっくりと身体に染み渡っていく。
あぁ、ずるいなぁ。
そっとため息を吐く。
一回じゃ吐き足りない、全然。

雪に反射した光が悠太を包み込んで、綺麗だなぁ、食べてしまいたいなぁって思った。


BGM:Twinkle Snow,Powdery Snow/Perfume



2013/03/01 20:56


▽リョ→不二
ただ、あなたに惹かれてる。

「不二先輩」
「越前?どうしたの?」

はっきりと自覚したのは最近。
ただただ、どうしようもなく、この頭は不二先輩のことしか考えられない。
強く強く、不二先輩に引き付けられてる。
それはまるで重力のようで。
逆らえない。抗えない。

不二先輩は気付いてた?
そうやってわざわざ俺の目線まで屈んでくれるとこも、細くて綺麗な指も、柔らかい笑顔も、全部。全部に。

「不二先輩が好きです」

不二先輩に堕ちていく。


2013/03/01 20:53


▽菊不二
あの交差点は、キミとボクとの別れの場所。

いつものように部活が終わったら英二と一緒に帰る。
今日の部活のこと、教室での出来事、いろいろなことを話して。
ただそれだけなんだけど、すごく楽しい。
英二の隣は心地良い。
ずっといたいなって思ってしまう。

どんなにゆっくり歩いていても、必ずそこへ来てしまう。
英二は左に、ボクは真っ直ぐ。別れ道。

今日はこれでキミとの時間が終わってしまうんだなって。
そう思うと胸が苦しくなる。
また明日になったら会えることくらいわかってるけど。

「じゃ不二、また明日」
「うん、また明日」

ひらり、手を振ってキミは一人、歩いていく。
ボクはしばしその姿を見送って歩き始める。
今日も言えなかった言葉。

「えーじ」

小さく呟く。
キミに届くことはない。
好き、なんて、たったこれだけなのにいつも言えない。

好きな人に好きって言うことが、こんなにも苦しいことだったなんて。


2013/03/01 20:53


▽菊不二
君と出逢ってもう3年も経つんだね。

4月の入学式で会ってから同じ部活に入って。
いつも物腰柔らかでテニスも上手い不二に気付いたら俺は惹かれてた。
だから、不二に気持ちを伝えた。
そしたら不二は受け入れてくれた。

それからは二人でいることが増えて、俺しか知らないような不二を知っていった。
一つひとつの仕草が、声が、表情が、いとしい、なんて。
初めて知った感情。

「ね、不二」

あいしてる。
言ってみた。
不二は顔を真っ赤にしてた。可愛い。

愛してるの一言で片付けたくはないけど、でも、それ以外にこの気持ちの表し方なんて知らない。


2013/03/01 20:52


▽茉咲→春
毎日が楽しくて、でもせつなくて。

「笹につるしたってそこで終わりだろ」

勇気を出して春ちゃんの手を握ったあの日。
どうしようもなくドキドキして、でもその手を離したくなかった。

春ちゃんがわたしにくれる優しさは別に特別じゃなくて、みんな平等。
ちょっとだけトクベツに見てほしくて、毎日春ちゃんのところに通って。
いつもいつも春ちゃんは優しく受け止めてくれるけど。でも。

「茉咲ちゃん」

わたしを呼ぶ、優しいその声を聞けなくなってしまったら。受け止めてもらえなかったら。
そう思ったら、怖くて、涙が溢れて。
止められない。

春ちゃんの優しさで包まれた世界は、わたしの涙で滲んでる。


2013/03/01 20:51


▽リョ→不二
それがどうにもならないことくらい、わかってるけど。

不二先輩はいつもいつもオレを子供扱いだ。
何で?
オレってそんなに子供っぽいの?
二つしか違わないじゃん。

少しでも対等に見てほしくて、オレは今日も背伸び。
ちょっとだけ大人ぶってみる。
ずるいよね。不二先輩はいつだって等身大なのに。

年の差が埋まらないことはわかってる。
でも、もうちょっと一人の人間として扱ってよ。後輩じゃなくて。
ねぇ、不二先輩。


2013/03/01 20:50


▽菊不二
「不二ー、明日駅前行こうよ」
「うん、いいよ」
「じゃ約束ー、指切りー」

なんてことない約束。
だけど、オレの鼓動はいつもより速くなる。
絡めた小指が熱くなる。
オレの頭は不二でいっぱい。

好きでいるだけで毎日こんなに楽しくなるなんて。
考えたこともなかった。
でも少しだけ胸が苦しくなる。
好きすぎて苦しいなんて、初めてだ。

小さな約束を重ねるたび、オレは不二を好きになっていく。


2013/03/01 20:49


▽千鶴とメリー
「メリーってほんと胸ないよなー」

違う、そんなことが言いたいんじゃなくて。

「かっわいくねー」

本当は。

「怪力女ー」

本当は。

「暴力ー」

本当は、だいすき、なんて。

「(好きな子いじめるって小学生かよオレ…)」

素直になんてなれない。



2013/03/01 20:48


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