1.祐悠
2013/03/01 20:56
願いを叶えて、想いを伝えて。
「はい、祐悠」
「ん、ありがと」
冬の休日。
オレはいつものように悠太と本屋に出かけた。
その帰りに公園のベンチに座って、積もった雪を眺めた。
空からの光が反射して眩しい。
「あったかいね」
「うん」
悠太が買ってきたココアは冷たくなった指先をじんわりと温めた。
一口飲めば口の中に甘い味が広がった。
「……」
ちら、と隣にいる悠太を見る。
指に息を吹きかけて、ココアを啜る。
ただそれだけのことなのに、どうして悠太がすると寒そうだなぁ、温めてあげたいなぁと思うのだろう。
きっとそれは悠太だからだ。
悠太がトクベツだからだ。
好きだなぁ。ずっとこうしてたいなぁ。
「ゆうた、すき」
「知ってる」
「ずるい」
「なんで」
「オレばっかり好きみたい」
「そんなことないって」
そう言うと悠太は飲みかけのココアの缶をオレの唇に押しつけてきた。間接キス。
今は外だからこれで我慢して?
悠太の甘い囁きは、ゆっくりと身体に染み渡っていく。
あぁ、ずるいなぁ。
そっとため息を吐く。
一回じゃ吐き足りない、全然。
雪に反射した光が悠太を包み込んで、綺麗だなぁ、食べてしまいたいなぁって思った。
BGM:Twinkle Snow,Powdery Snow/Perfume
prev |
next