3.菊不二
2013/03/01 20:58

君がどこにも行かないように、強くその手を捕まえた



夢を見た。不二がどこか遠くへ行ってしまう夢。
悲しい顔をして何かを言って、そしてそっと笑って不二はオレに背を向けた。
何処行くの。待って。行かないで。
言いたかったのに全然声が出なくて、身体も動かない。
その間にも、オレと不二との距離はどんどん開いていく。
どうしよう、不二が手の届かないところへ行ってしまう。
焦りが募ってきた頃に目が覚めた。

「っ…」

全身に嫌な汗をかいていた。
深呼吸を繰り返して速まった鼓動を落ち着かせる。
大丈夫だ、不二はちゃんと隣にいる。


「……」


そっと不二の手を握った。
伝わってくる体温に、少しずつ気持ちが落ち着いてくるのがわかった。
しばらくそうしていると、不二は「ん…」と小さく声を出し、うっすらと目を開けた。


「英二…?」
「不二…っ」


不二の手を引いて腕の中に収める。
不二がちゃんとここにいること、わかってるけど、さっきの夢がちらついて怖くなった。
何処にも行けないようにきつく抱き締めると、不二の手がオレの頭に触れた。




BGM:センチメンタル/ゆず




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