密会


薄暗い廊下を進んでいく。

廊下の突き当りの部屋の主に用があった。

しかし、その手が部屋のドアを叩くことはなく、その足は左へと歩を進める。

向かう先には書庫があった。先日の件により、今は扉が直されるまで申し訳程度に簾がかけられている。

その簾をくぐり、主のもとへ向かう。予想通り机に向かっていた。




「ーーーー兄王様」

「ーーーーなんだ、紅明、いや、今は紅、だったか」


クックッと笑う我が兄、練紅炎

ちなみにあの者の世話をしろ、と命じたのはこの兄である。

そのおかげで、名前も変え(といっても一字にしただけだが)周りの者も紅としての私をどう扱うべきか困っているのだ

「ーーーー誰の所為だとおもってるんですか!誰の!」

「クックッ、そう怒るな。それに、なかなか世話係が板に付いているではないか。」

「それは、普段から兄王様や神官殿のような、日常に無頓着な方々と共にいるのですから、あんなのは朝飯前ですよ」

「それは結構じゃないか。ところで、どうだ、アイツは。なかなか面白い奴だろう」

「面白いかどうかは別として、変わった男である、という事は認めましょう。今日は神官殿といかに麺を速く啜れるか競っていました。」

「クックックッ、、、"変わった男"、か。で、結果は?」

「、、、、、、、私が勝ちました」

「フッ、、、、」

「、、、なんですか、その意味深な微笑みは」

「お前も素直じゃないな、あいつが気に入っているなら気に入っていると言えばいいではないか」

「別に気に入っている訳ではありません」

「クク、、そうか。」


そう言って、まださも可笑しそうに笑っていたが、ふっと、真面目な顔に戻る。



「それで、、、あの剣は見たか。」

「、、、はい。五芒星で間違いはないかと。流石にどの様な魔神かは分かりませんが」

「、、、そうか、ジュダルには何か聞いたか」

「いえ、私からはまだ何も。ですが、マギともあろう者が気づいていないという事があるのでしょうか」

「どうだかな、、、だが、あいつに興味は示しているのだろう」

「はい、殆ど共にいます。よほど気に入ったのかと。戦いを求めることも多々ありましたが、今は遊ぶ事に熱中しているようです」

「、、、そうか。アルサーメンではないのだな」

「おそらく」

「、、、レームやシンドリアが絡んでいると思うか」

「それはどうでしょう、あの国の者達が直接探りを入れに来る可能性は低いかと」

「だろうな、、、とすると、自分で攻略したのか、それともさすらいのマギの手の者か、、、」

「後者が有りうるでしょうか。どの国にも介入しないものかと」

「だが可能性が無い訳では無いだろう」

「確かにそうですね、、、シンドバッド王の例も有りますし、、、、」

「、、、まぁ、今回の討伐で奴の実力が分かるだろう。それ次第で今後どうするかを決める。
身元が判明しない以上、討伐にもお前が付け、あと紅覇も連れて行くといい、もちろん身分は偽れ。そして、お前達以外を連れて行く必要はない。」

「御意」





また簾をくぐり、今度は自らの部屋へ向かう。

空には、輝くばかりの満月と、その側で、いつから現れていたのか、燃えるような紅い星が輝きを放っていた。





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