プロローグ 『ねェねェ、君は誰?』 「私? 私はねェ――――――」 あの子の名は何だったろうか。 幼い時の記憶だからか、かなり曖昧で、部分的にしか覚えていない。 自分が夢を見ることですら珍しいのに 幼い時の、しかもおそらく現実に起こったことだろうと思われるだけに 久しぶりに見た夢の内容が気になってしょうがない。 ―――忘れていた記憶だった。 そもそも、それがいつどこで起きたのかももう覚えてない。 でも、それは自分にとってとても大切だったはずなのだ。 なのに、いつの間にか忘れていた。 『いつまた会えるの?』 「そうだなァ・・・ その時は―――きっとルフが導いてくれるよ。」 『・・・・ルフ?』 「うん。きっと君にも分かるようになるよ。」 どうして”今”夢に見たのか―――― 「・・・・・・まァ、悪い気はしなかったな。」 夢を思い出しながら、不思議な安堵感に浸っていると 従者の声で現実に引き戻された 「紅炎様、軍議の時間でございます。」 「あぁ、分かった。今行く。」 ”その時”は、確実に、確実に近づいていた――――――――― [back] |