運命




「ねェねェ、君は誰?」



紅の髪の少年が私に尋ねる。

そうだ、私はこの子を知っている。

・・・・名前は何だっただろう。

そして、私はこの子に伝えねばならない

・・・・いったい、何を?

私は君に何を伝えなければならないの?

すぐそこに、求める答えがあるのに、それは海の泡のように私の指の隙間から抜け落ちて行く

ねぇ、待って、消えないで

私は確かにこの時伝えたのだ。私の名と共に



「私? 私はねェ、蘭、蘭よ。」


あぁ、そうだ、この後、私はーーーー

答えが、もうすぐ分かる。この手に掴める、思い出せ、思い出せ

その時、声がした。どこかで聞いたことのある声が

「何も思い出さなくていいよ、さぁ、お眠り、もうすぐ、もうすぐで、君は自由になれるんだから」

あぁ、お願い、邪魔しないで、もうすぐなのよ、もうすぐ分かるの。

「さぁ、お眠り、君にはまだ早い。」

いったい何が早いというの、いったい、何がーーーー

声に抗おうとするも、暖かな声に誘われるように、再び深い眠りに落ちていった

「君は、まだ思い出してはいけない、大いなるソロモンの鍵よ、君は、この世界の命運を握っているのだからーーーーー」


*************************


心地良い温もりの中、目が覚めた。

・・・何か、大切な夢を見ていた気がする。

思い出そうとしても、頭の中に靄がかかったように、何も、思い出せなかった

前にも同じ事があったな、と思いながら、まだ覚醒しきっていない中、辺りを見回す。

どうやら、誰かに運ばれたらしい。

マギとの戦いの中で負った腹部の傷は当たり所が悪かったのか、思いの外出血してしまい、朦朧とする意識の中、どうにか逃げ切った事は覚えている。

確か、最後に人に会った気がするが、おそらく、その人が運んでくれたのだろう

部屋をみると、どうやら裕福な人のようで、おそらく、商人であろうと思われる。

どうしたものだろう、素直に事情を話す訳にもいかない

そもそも、ここは何処だろう。

天蓋付きのベッドから体を起こす。

ふと、身体をみると、包帯が巻かれ、腹部の傷も回復しつつあるようだ

…そもそもどのくらいの間寝ていたのだろうか。

知らなければならないことは多そうだ。




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