偶然か必然か


「おかしいわ……何処なの……?ここは………」

自由の喜びに浸っていたらいつの間にか、賑やかな街並はいつの間にか寂れた街に変わっていた。

何処をどう来たのかも覚えていない。

どうしよう…

周りを見渡しても誰もいない。完全に迷子だ。

一人で見知らぬ所にいるという現状。
しかも、薄気味悪いことこの上ない。

自由になれた高揚感も、今では不安感が取って代わっている。

自分の側近の姿を探すが、いるわけもない。

「…っ、夏黄文、何処にいるのよぉっ……!!」

コツ、コツ、コツ、コツ…

今にも泣き出しそうになっていると、足音が聞こえた。

「…っ!!!」

こんな所にどんな者がいるのであろう。
普通の住民がいるはずはない。

…もしや人攫いではないだろうか、という考えが頭をよぎった

そうかもしれない…!きっと、夏黄文とハグれたのを見て私を追って来たのだわ…!!!

どんな身分であっても、皇女は皇女なのだ。
城から出た所を見られていたのかもしれない。

・・・攫われてはお兄様方にご迷惑がかかるもの、攫われるわけにはいかないわ…!

金属器である自らの簪を手に取る。

来るなら来なさい…!!やってやろうじゃないの…!!!

コツ、コツ、コツ、コツ…

だんだん近づく足音

心臓がうるさい。落ち着くのよ私。大丈夫。金属器があるもの。私は強いわ。

コツ、コツ……

足音が途絶え、人影が姿を現す、と同時に簪、否、剣の姿に変えた己の金属器を突き出した………はずだった。

「…ちょっと、お嬢さん、こんな危ないもの振り回すなんて、なんて物騒な。…けほっ、そのうち怪我人でますよ……」

いつの間にか、手元に金属器はなく、不審な人物の手の中にあった。

「…なっ!ちょっと貴方!な、なんで貴方が持っているの!?わ、私、確かに貴方に向けて突き出したのに……!!!」

「あぁ、すみません、つい、癖でして…
勿論お返しいたしま……す……」

バタッ

「えっ…!ちょ、ちょっと!どうしましたの!?……っ!!あ、貴方、こんなに血が………!ちょっと!大丈夫なの!?……誰か!誰かいないの!?誰か!!!」

剣を差し出したかと思うとその場に倒れてしまった謎の人物は、腹部に大きな傷を負っているようで、服の下から血が滲み出ている。
顔を上げると、出て来た所にも、血の跡が続いているようで、ここまでやっとの事で来たのだろう。

何はともあれ、怪我人を放っておく訳にもいかない。

できる限りの処置を施さねばと、紅玉は動きだしたのであった。


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