堕転のマギ


一面の赤、赤、赤

辺りには人、人、人

そんな地獄絵図さながらの中に立つ一人

「・・・・・・・・・・・・・・・・がはっ、お、お前、何なんだこの強さは・・・・・!!!こっ、こんなのは、聞いたことがないっ・・・・・・!

何者・・・・・・お前はっ、何者だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


「だーから、教えるつもりはないって言っただろ。あ、いいか!俺は正当防衛だからな!!!他の奴らをよこすなんて事はすんなよ!!!

ってことで、よろしく。じゃ、暫く寝とけ。」




「・・・・!がはっ。」


ドスッと鈍い音がし、大男は意識を失った。



あー、どうしよう。結局何にも掴めなかったなぁ。


その場で唯一形を残す椅子に座り、思案するその姿は、いったって普通で、息すら上がっていない。

今しがた殺人集団と刃を交えたとは思えないほどの態度とは対照的にその衣服は血まみれで、もちろん、それは相手方の血の跡なのだが、もし、普通の者達が見れば、すぐに逃げ出すだろうと思われた。


しかも血まみれだし、このまんま外に出るわけにもいかねえしなぁ。

と思案していると


「うっひょーーーー!!すっげぇーーーーー!!!あいつら、ボッコボコじゃん!」


少年の感嘆する声がした。

顔を上げ、その姿を確認する。


・・・・・・・。やばい、暴れすぎた。

何分、久しぶりだったもので、憂さ晴らしを兼ねてやってしまったのがいけなかった。

この状況はとても悪い、正体がばれてしまえば一巻の終わりだ。

よりによって、アルサーメンのマギなど!

「なぁ!これ、あんたがやったんだろ!?なぁ、そうなんだよなぁ!?

 すっげぇ強ぇ奴が来たと思って来てみればこれだよ!!!こいつらボッコボコに出来んのなんて、俺か紅炎ぐらいだぜ!?

なぁ、お前なんだろ!これ、やったのは」

ここは、誤魔化すしかない。

「・・・・・・・・なわけないじゃないっすかぁ!俺は一番下っ端っすよ!!最近入ったんス!

いやぁー買い出しに行って、忘れ物したと思って帰ってきたらこれっすよ!

いやぁー、ホント誰なんでしょうねーこんな事したのは。ハハハ。いやー困ったなぁ!

あーー!やべぇ、結局買い出し行けてねぇ!

あ、すいませんけど、これ、帝都に伝えてもらえます?俺1人じゃ、どうしようもないんで。

じゃあ、俺はちょっと、行ってくるんで、お願いしますよ。」

動揺を顔に出さずに、これが、至っていつもの事であるかのように歩き出す。

この場さえしのげば、後はどうにでもなる。
もう少しで外だ、外に出ればすぐにこの場を離れよう。

情報は欲しいが、正体がばれては元も子もないのだ。



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