▼ その顔は卑怯じゃないか?
「、、、では!いつもご連絡ありがとうございます!またよろしくお願いします!こちら報酬になります。」
「あ、ご丁寧にどうもどうも、こちらこそありがとうございます、お疲れ様でしたー」
いつもビシッと敬礼をする顔馴染みになってしまった海兵にゆるく挨拶をし、いつものように見送った。
(それにしても手応え無かったなぁー)
女の悲鳴に誘われ来てみれば、まぁ、いい感じに危なげな雰囲気で、しかも馬鹿そうな奴らだったから、迷わず喧嘩をふっかけてみれば釣れるわ釣れるわ。
挑発にのって何人も出てきたところまでは良かった。
(今日は失敗だったな)
数がいれば何とかなるかと思えば、質が悪すぎた。
これでは運動にすらならないではないか。
(さて、どうしよっかなー)
と思案するが、なかなか良い方法も思いつかない。ただ走るなどと彼女が考えることは無い。
単純な運動をするなんてつまらない、と彼女は思っているからだ。
「ーーーーーーあのっ!!先程は助けていただき、ありがとうございましたっっ!!!」
「うん?」
どうしようかと考えていれば、いきなり礼を言われ、思わず振り返る。
(ーーーーーー忘れてた。)
そうだった、襲われてた娘がまだいたんだったか。
いつもなら渡してとっとと引き返すが、考え事をしていたため、話しかけられてしまったようで
「お、あーー、いーよいーよ気にしなくて、若い娘を助けることが私のポリシーだから」
運動がてらにちょっとね、なんて言ったら不審に思われるに違いないので、適当に理由をつけて答えてやる。
もしかしたら怖がらせてしまったかもしれないので、早いことずらかろう。と思い、早々に別れを告げようと口を開く
ーーーが、何故か食い入るように見つめてくるため、中々に気まずい。やはり、何かしてしまっただろうか。
攻撃は当たらないように加減したはずなんだがーーーーーー
と、疑問に思いながらも言葉を紡ぐ
「ーーあのー、すいませんけど、私はこれでーー
『是非お礼をさせてください!』
ーーーーーーえ?」
唐突な言葉に思わず目を丸くする。
自分が喧嘩したかったついでとして助けただけでお礼なんてとんでもなかった。
だが、
ぜひ!!!と目をキラキラと輝かせている彼女に無理だと言うことなど、到底できなかった。
その顔は卑怯じゃないか?
眩しい笑顔に私が弱いなんて、彼女は知らないのだろうけど
(あのー、お名前はー、、、)
(ん?あぁ、レイだ)
(レイさん、ですか!私はリンネと申します!)
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