桜がひらひら舞い落ちるころ、わたしたちはここで出会ったんだっけ。そんなわたしには似合わないことを言ってみた。あなたはお前らしくないな、なんてふっと笑う。
「ねえ、鬼道」
「なんだ」
別れってなんであるのかな?
一瞬鬼道の目が見開いたように見えた。(よく見えなかったけど)でもやっぱりいつもの顔に戻って「さぁな」と一言。
「別れなんて、来なくていいのに」
そうしたらみんなとずっと一緒にいられるのに。
ざあっと春の暖かさを含んだ風が私たちを包む。もう鬼道は何も言わなかった。気づいたら私の頬には涙が伝っていた。
「…っ…ぅ」
「……」
「ひっく…やだ、よっ…」
「……」
「みんな…っ、とお別れなんて…っ」
鬼道は何も言わずただ抱きしめてくれた。わたしはただただわんわんと子供みたいに泣くばかりで。
この三年間ほんとに楽しかった。雷門は始め本当に廃部になる寸前だったけど、円堂くんやみんなと頑張った。そして、世宇子中を倒して帝国のみんなの敵をとると言って雷門に転校してきた、鬼道に出会えて。…本当に別れが来るなんて、思ってもみなかった。
「…、鬼道…?」
「……っ」
「…泣いてる、の?」
「…別れが、悲しいのはお前だけじゃないさ」
「…そうだね」
「…だが、」
「?」
「俺にはお前がいる。これからも」
「!…い、いの…?私なんかで…」
「なんかじゃない。…お前がいいんだ」
「…ありがとう」
ありがとう、大好きだよ。ずっと、これからも。
私たちは綺麗な夕日が静かに沈むなかで、泣きながら笑いあった。
110226 星空とスピカ